*撮影したビデオカメラより文字化しました。
【司会者・加藤博さん】(北朝鮮難民救援基金事務局長) 次は特定失踪者問題調査会の荒木和博さんですが、荒木さんは皆さんもご存知のように「しおかぜ」という(北朝鮮向け)短波放送を通じて特定失踪者に呼びかけをしております。聞いたところによりますと、昨日は実際に日本に戻られて来た脱北者たちのインタビューを録音されたと、新たにメッセージが届くのではないかと、新しい希望もまた生まれて来つつあるかな、いうふうに思います。荒木和博さんにお願いします。
【特定失踪者問題調査会代表・荒木和博さん】 ご紹介いただきました荒木でございます。皆さん、本当にご苦労さまです。私ども特定失踪者問題調査会というのは、政府が認定していない拉致被害者について調べて、そして明らかにし救出を目指す、という団体でございます。私はこの約10年間、拉致問題の救出運動という事で進んでまいりましたけども、その前半を救う会の役員として、そして後半、今から4年前からですね、特定失踪者問題調査会を立ち上げまして、その代表という事でやってまいりました。
最初にお話をされましたホン先生(洪ヒョン氏・元駐日韓国公使・早稲田大学)にはもう10年以上前からの付き合いなんですけども、確か拉致問題が明らかになるというか運動化される前からだと思うんですけど、「北朝鮮の体制を追い詰めるのは人権問題でいくしかない」という事を何度も言われておりました。ただ恥ずかしい話ですけども、その時は私自身そこまでの意識はありませんで、日本にとってみれば朝鮮半島というのは、やはり第一の関心は安全保障の問題でありますから、そちらの方が重要じゃないのかなと思っておりましたけども、(救出運動を)やっていく中で、自分自身もそういう理解をしてきた、という事でございます。
10年前に横田めぐみさんの事が明らかになり、救出運動が始まりました。最初作りました署名の用紙には「横田めぐみさんを始めとして拉致された日本人を助けよう」という事で書いておりました。そしてやがて日比谷で第一回目の大集会をやったのはその2年後だったと思いますが、その時に韓国から拉致被害者のご家族がやって来られまして、初めて集会でお話をされました。それ以降救う会の署名簿は「日本人」という言葉を「拉致された人々」に置き換えて、そして「拉致された人々を救出しよう」と、つまり「日本人に限らず拉致された人はすべて助けよう」というふうにしてやってまいりました。
そしてさらに私自身この運動でやる中で、決して問題が拉致だけではない、収容所の問題・脱北者の問題を含めまして北朝鮮の人々の人権の問題にも密接に関わるのである、という事を非常に痛感を致しまして、「この問題はやはり包括的な問題なんだなぁ」と、ホン先生から言われてからもう十何年も経っているのも本当にお恥ずかしい情けない話でございますけども、今それを痛感しております。
そしてこの10年間、拉致の救出活動をやっておりまして、私自身はそれ以前ずっと政治活動をやってきた人間でございます、その視点から致しますと、これは被害者の方々あるいはご家族の方々に対しては大変失礼な言い方になるんですが、この拉致被害者の救出運動ほど楽な運動はまったくございません。言った事は皆さん理解していただける。やはり特に日本人という事であれば「同胞が拉致をされているんだ」という事で、運動に参加していただける方が非常にたくさんあり、あるいは報道機関の方も報道していただける。
それに比べると、正直言いまして「一般の北朝鮮人権問題の運動」というのは、やはり非常に地味な運動でございます。ですから山田先生(北朝鮮帰国者の生命と人権を守る会代表)、あるいは加藤事務局長(北朝鮮難民救援基金)を始めと致しまして、そういう問題に地道に取り組んでいる方は私どもよりはるかに重要な役割を果たしている、という事を本当に実感を致しております。
その絡みを含めて今日この後お話致しますが、先ほど斎賀大使のお話の中で、私聞いておりまして、非常に私どもの関係で重要な問題がございました。というのは、お話の中でこの拉致の事に関わった中で「現在政府は12件17名の拉致被害者が政府により被害者と認定されていますが、その他にも三十数名の方が北朝鮮により拉致された可能性が高いと考えられています」というお言葉でございます。実はこういう言葉を政府の方が話すのは今回が初めてであります。
「三十数名というのは何を示しているか」と言いますと、これは去年の11月の日朝協議以降、外務省が北朝鮮側に安否確認をしている方々、また私ども特定失踪者問題調査会で拉致の可能性が高いと現時点で言っております1000番台リスト34人と、そして小住健蔵さん、福留貴美子さんのお二人、実質は36人です。ただし日本では1000番台リストの中の山本美保さんと福留貴美子さんについては、これは警察が「拉致ではない」という認識をしているために、まぁ省庁間の齟齬をなくすために「三十数名」という事にして、誰を安否確認したかについては公式には外務省は明らかにしておりませんが、やはり基本的にはそういう認識である、という事だろうと思います。
この間の松本京子さんの(拉致)認定の問題で、この認定という事が非常にクローズアップされましたが、いくら認定をしても認定をされた事は被害者の解決にならない、この人権週間を設定しあるいは人権法を制定しても、しただけではその北朝鮮の人権侵害に苦しんでいる人たちを救う事にならないのと同じように、拉致認定をしただけで拉致被害者を救う事にもなりません。
それでこの認定という問題、逆にこれは法律化されてしまったために返ってその壁を作ってしまった、特に外国の方には非常にわかりにくい状況になっていると思います。私どもは言っているんですけども、「ここでもっと基準を下げて、そしてもう色々なかたちでやったらいいのではないか」と。例えばここにマスコミの方がたくさんお見えですけども、例えば朝日新聞認定・テレビ朝日認定・TBS認定・NHK認定、みんなでそれぞれ勝手に「認定のリスト」を作ってどんどん出してしまったらどうか?(会場笑い)と。そういう事をしていくと、いつのまにか認定というのが訳がわからなくなってくる。「ともかくたくさんいるみたいだ」と感じるようになった方が実際の救出にはプラスになるであろう、という事でございます。
この拉致問題というのは、これから先、事態が明らかになってまいりますともっと複雑になります。というのは、先ほど山田先生がお話になった「帰国者の中でも無理矢理連れて行かれた方がいる」という事がございましたけれども、拉致被害者の中にも逆に、自分の意思で入って出られなくなった方、これは有本恵子さんもそうなんですが、もっと確信犯的に北朝鮮が好きで北朝鮮に入ったと。しかし帰るつもりだったのに帰してもらえなくなったというような人、あるいは、場合によっては例えばお金で契約をして、技術者で行ってそして出られなくなった人とか、そういう様々なグレーゾーンがもう出てくる事は明らかなんです。
しかもおそらく向こうで結婚してお子さんたちがいると。こういう方々に関しては、脱北帰国者の方々と同様なかたちの扱いがされなければいけなくなってくる。ですから問題は「ここまでが拉致した人、そしてこれから先は拉致以外」というような区別はこれからできなくなってくるだろうと思います。
また、連れて行かれる途中で殺害されてしまった人とか、北朝鮮で命を落とした人というのも当然いる事を我々覚悟していかなければいけないわけでございまして、そういう問題にも直面していかなければならないと思います。これは我々にとっておそらく相当しんどい事になるだろうと思います。
私、今から4年前の9.17の小泉訪朝で、横田さんたちご家族に政府が「亡くなりました」という事を伝えた現場にいた数少ない人間の一人でございますが、あの時は「私自身が今まで拉致の救出運動をやる事によって助けられると思っていたのに、逆に殺されてしまったんではないか?」と「ひょっとして自分のやってきた事は人殺しだったんではないか?」という思いをした事がございまして、あの光景はおそらく私は一生忘れないだろうと思います。
ただ幸いにしてその後ですね、その情報が「ウソであった」という事がわかりましたのでよかったですけども、私ども調査会の人間みんなですね、やがてそれと同様の事をご家族に伝えなければいけない時が来るのではないだろうか、という事の覚悟をして、そしてしかしそれでもやはり真実に向き合っていかなければいけない、そのように思っております。
私どもは今まで、特に日本人は非常にこういう問題について受身でございました。やられた事に対して対処をすると、そしてそのやられた事もできるだけ矮小化していく、という事でやってまいりました。まさに国の防衛方針が専守防衛ですから仕方ないんですけども、そうではなくて、このやはり自由とか人権を守るためには、我々自身がまさにそれに反するものに対して『攻撃は最大の防御である』という戦いの姿勢を持っていかなければいけない、と感じております。
先ほど加藤さんからご紹介いただきましたように、私どもは現在1日1時間ずつ、早朝・深夜に北朝鮮に向けて短波放送を行っております。この放送も去年の10月の末から始めまして、もうすでに1年以上経ちました。やっと政府も少し協力をしてくれる、という方針が出てきたようなので、さらに「より聴こえるように、よりいい情報を送れるように」という事の努力をしてまいりたいと思っております。
これはもう我々だけでやる事ではなくて、韓国の“自由北韓放送”、あるいは“RFA”(Radio Free Asia 自由アジア放送)ですとか、あるいは“FEN”(Far East Network極東放送)ですとか、様々なところでやっている放送とも連携をとってまいりたい。
それから、NHKの国際放送も現時点ではせっかく朝鮮語の放送を北朝鮮に流しているんですが、「北朝鮮の一般の人は聴けない時間帯・周波数で流してしまっている」という事で、これはもう放送の内容の問題ではなくて、「今の放送で全然かまわないので、ともかくもっと聴ける時間と周波数で流してもらいたい」という事を今後要請するつもりでおります。
でまぁ、この放送の中で私どもとしては、今日本語では「北朝鮮にいる方々・拉致被害者の方々にまず希望を持ってもらいたい」と「我々は救おうとしているんだという希望を持ってもらいたい」という事を伝えております。これは私自身のナレーションの中で言っているんですが、「北朝鮮に拉致された方々、そして様々な理由で北朝鮮に渡って戻れなくなった皆さんへ」と言っております。もちろんこれには当然帰国者の方々も含むわけでございまして、そういう方々に少しでも日本で何とか助けようとしている希望を持っていただく、という事をやっております。
そしてもう一つは、北朝鮮の中から何とか情報を出してもらいたい。私どもの東京中央郵便局に私書箱(東京中央郵便局私書箱1022号、しおかぜ宛)を持っておりますが、この番号を繰り返し流して、中国に脱北した人を何とかどうしてでも私どものところに情報を送っていただきたい。その情報があれば政府とも連携しながら救出の活動に出て行けるのではないだろうか、というふうに考えております。
もちろん我々はラジオをやること事態が目的ではございませんので、おとといの与野(さいたま市)の国際会議でもお見えになっておりました李ミンボクさん、韓国で風船にビラを付けて北朝鮮に流しておられるご努力を一生懸命やっておられますが、この李ミンボクさんたちの会とも協力致しまして、私どもも日本語のビラを北朝鮮に送りたいと感じております。
それでおとといも実は申しましたのですが、8月の末にソウルに行きまして、江華島からビラを飛ばすのに一緒に手伝わさせていただいたというか実施見学をさせていただきました。それで「たまたま失敗して上空で弾けたビラが、2日ぐらい後にソウルの大統領官邸に落っこったという事で問題になった」と聞いております。この話を三浦小太郎さん(北朝鮮帰国者の生命と人権を守る会)に致しましたら、「まぁソウルの大統領官邸も北朝鮮みたいなもんですからいいんじゃないですか」というお話がございまして、「ひょっとしたら上手くいけば青瓦台(ソウルの大統領官邸)から亡命してくれる人が出て来るかな」という期待をしている次第でございます。
*写真は12月10日「映像とシンポで語る北朝鮮」の集会で、ジャーナリストの萩原遼さんが李さんからいただいたビニールのビラを撮影したものです。*風船 飛んでゆけhttp://aoinomama13.seesaa.net/article/29598445.html それ以外にも、あと出来るのは「北朝鮮に対してファックスを送る」という方法がございまして、これは私も前にしばらくやっていた事がございますが、平壌の場合、ファックスの使われる市外局番というのが、私がわかっている限りでは381だけでございますので、平壌の番号が02でしたかねぇ、02381のあと4桁の番号でできますから、これに0000から順番に送っていくと必ず200件くらいファックスが届きます。ファックスはもうどんな事をしてもその機械のところまでは行きますので、郵便なら止められてしまっても(ファックスは)検閲はできませんから、まぁお手間がある方はですね、1回300円でできますのでやってみられたらいいんじゃないかと思います。1回やっていましたら、向こうで「ウイウイ?」という声が聞こえましたので、「中国大使館の関係者か何かにも届いたんじゃないかな?」と思われた時がございます。
*ファックス番号につきましては、聞き取りに間違えの可能性がございます。おかけになる場合は、ご自身で事前にご確認の上お願い致します。 ともかくそういうふうにして、こちら側から可能な情報をすべて入れていく、そして助けようとしている、という意思を伝えていく事によって、北朝鮮におられる方々に希望を持っていただくと。
そしてまたさらに「北朝鮮にいる北朝鮮の幹部などに楔を打ち込んでいく」という事が必要であろうと思います。今朝鮮語の放送を私がやっておりますが、北朝鮮の幹部に呼びかける言葉の一つは「拉致被害者の救出に協力してください」と「救出に協力してくれたら私たちは絶対に皆さんの事を忘れません。救出に協力してくれなかったらその事も絶対に忘れません」このように言っております。(会場笑い)
また「今この体制を打倒するために立ち上がってくれれば、皆さんは民族の英雄になりますよ」と「最後まで金正日と一緒にくっ付いていたらどうなるかわかりますね?」というふうに優しく呼びかけておりまして、まぁ、こういう事をみんなで色々とやっていけばやがて必ず私は効果が出てくると思っています。
それで最終的にはもう(北朝鮮へ)行って捜すしかございません。拉致被害者の中でもまったく身寄りがない方の場合は、我々に届け出も警察への届け出もできません。そういう方々の場合は、もう誰も(北朝鮮に)行っている事がわからない。その人を捜すためには、向こうにみんな入って自由に向こうから出て来られるようにせざるを得ません。
つまり「拉致の解決」というのは、それを最後までやるためには、北朝鮮にいる一人一人の方々が自由にものが言えて、自由に自分の暮らしができるようにしていかなければいけない、という事でございます。ここにお出での皆さま方、そのためにこれまでもご尽力をしてくださった方々だと思いますけども、今後一刻も早く問題を解決するために、共に手をとって頑張ってまいりたいと思います。よろしくお願い致します。ありがとうございました。(大拍手)
【司会者・加藤博さん】(北朝鮮難民救援基金事務局長) ありがとうございました。
*荒木和博さんのブログhttp://araki.way-nifty.com/araki/*北朝鮮人権侵害問題啓発週間 北朝鮮難民救援基金HPよりhttp://www.asahi-net.or.jp/%7Efe6h-ktu/topics061121.htm*「'06 12/12 北朝鮮人権大使サミット」カテゴリhttp://aoinomama13.seesaa.net/category/2412171-1.html