先月、東京・永田町で日本で初めて開催されたダルフール写真展のカテゴリもぜひご覧になってみてください。これからも徐々に追加レポートを載せていきます。
*「'08 4/13 第1回ダルフール写真展」カテゴリ
http://aoinomama13.seesaa.net/category/5025133-1.html
【ナレーター】
アフリカ・チャド南東部。2007年4月、スーダンとの国境に近い“ティエロ”と“マレナ”と呼ばれる2つの村が襲撃され、400人以上が殺害されました。隣国スーダンのダルフール地方では、現在、政府の支援を受けたアラブ系の民兵組織ジャンジャウィードとアフリカ系の反政府勢力との間で紛争が続いています。そしてその争いはチャドにまで広がっています。襲撃直後の村では、駆け付けたチャドの民兵が恐ろしい虐殺の爪痕を目の当たりにしています。
【記者】VTR
「襲撃されたんですか?」
【チャドの民兵】
「ええ。あちこちに遺体が転がっています。スーダン人の仕業ですよ。ダルフールからやって来たジャンジャウィードにやられたんです。何の前触れもなく村人たちは突然襲われたんでしょう。家ごと焼き殺された人もいます・・。」
【ナレーター】
スーダンの周辺諸国にまで広がるダルフール紛争。世界最悪の人道危機が起きていると言われるその紛争地帯に潜入しました。
潜入ルポ ダルフール 隠された真実
【出川展恒解説委員】
「死者30万、家を追われた者250万、世界最悪の人道危機と呼ばれるスーダンのダルフール紛争の真相に迫るドキュメンタリーです。肥沃な大地と石油などの資源に恵まれたスーダンですが、独立後、激しい内戦が続きました。背景には、政治を支配するアラブ人とアフリカ系住民の根深い対立があります。
スーダン西部に位置するダルフール地方はフランスとほぼ同じ広さで、住民の多くがアフリカ系です。2003年に始まったダルフール紛争はアラブ系とアフリカ系の土地と資源をめぐる争いともいえ、周辺国や対国の利害も絡んで未曾有の悲劇となったのです。
スーダン政府がアラブ系民兵組織に武器を与えアフリカ系住民の虐殺を背後で操っているのではないか?この疑惑を解明するため取材班は隣国のチャドから陸路ダルフールを目指します。これまでテレビカメラが入れなかった危険地帯に命がけの潜入です。同じイスラム教徒同士、何故殺し合うのか?一緒に暮らせる日が果たして来るのか?インタビューに答えた住民の叫びが重く響きます。」
【ナレーター】
襲撃された村に駆けつけたのは“トロボロ”と呼ばれるチャドの民兵組織です。彼らは国境付近の村をスーダンの武装勢力から守るための部隊とされていますが、この日は間に合わず、村人たちを助けられませんでした。彼らの正体は謎に包まれています。欧米人から金品を奪う危険な集団とも言われています。しかし今回はスーダンの民兵組織ジャンジャウィードによる殺人や暴行などの実態を明らかにするため、取材に協力してくれました。
【記者】VTR
「これは何ですか?」
【チャドの民兵(トロボロ)】
「ジャンジャウィードが残していった薬きょうです。奴らは大きな口径の銃や迫撃砲も使用します。」
【ナレーター】
生き残った村人が近づいて来ました。まだ襲撃によるショックが収まらない様子ですが、村で起きたことを語ってくれました。
【生き残った村人】
「ジャンジャウィードは朝の5時頃に現れました。モスクで祈りを捧げていた時に侵入してきたんです。奴らは村人たちを皆殺しにする気でした。私は必死に抵抗しましたよ、この弓矢と刀を使ってね・・。」
【ナレーター】
村人たちを襲ったジャンジャウィードは自動小銃を装備しています。弓矢と刀では到底太刀打ちできません。襲撃の後、数日間、生き残った人々は犠牲者を埋葬してきました。女性と子どもの後に男性が埋められます。マレナ村の村長ハミスはかろうじて難を逃れました。しかし家族のほとんどを殺されました。
【マレナ村ハミス村長】
「ここに私の家族が眠っています。兄弟のムハマド、イブラヒム、オマル、ヤオブ、それにアリ、アバカルとウスマンです。そして私の息子のサイードも殺されました。安らかに眠ってくれることを願っています。」
【ナレーター】
ハミスの妻と子どもたちのうち4人は虐殺を免れました。生き残った家族を捜すため、ハミスは難民キャンプへ向かいます。
【マレナ村ハミス村長】
「あれが私の家です。すべて焼き尽くされてしまいました。残っているのはこの古い箱だけですね。これは持って行くことにします。子どもたちが何かに使うかもしれませんから。さあ、行きましょう。ここにはもう何もない・・。」
【ナレーター】
最後まで残っていた他の生存者も村を離れようとしています。ニワトリとわずかに残った身の回りの物をまとめて安全な場所へ避難します。村長のハミスは大切なお守りを袋に詰めました。“グリグリ”と呼ばれる魔除けで、亡くなった兄弟の一人が身に付けていた物です。
【マレナ村ハミス村長】
「これは私の弟が持っていた“グリグリ”です。身を守るために腰の回りに巻きつけておくんです。これもです。」
【マレナ村住民】
「こんなふうにしっかりとね。銃弾を跳ね返してくれるんですよ。」
【記者】
「弾を跳ね返すんですか?」
【マレナ村ハミス村長】
「ええ、そうです。でも、弟のことは守ってくれませんでしたけどね・・。」
【マレナ村住民】
「残念です・・。」
【マレナ村ハミス村長】
「それもすべて神様が決めたことです。」
【ナレーター】
ハミスの家族を殺したアラブ系の民兵組織ジャンジャウィードは、スーダン西部のダルフール地方で殺戮行為を繰り返していると言われています。近年、その被害は国境を越えてチャドにまで広がり、人々は村が襲撃されることを恐れています。
【マレナ村住民】
「ここもダルフールみたいに何もかも破壊されてしまうかもしれません。」
【マレナ村ハミス村長】
「君、この荷物もトラックに載せてくれないか?」
【チャドの民兵(トロボロ)】
「いいですよ。」
【マレナ村ハミス村長】
「丁寧に扱ってくれよ。私の全財産なんだから。」
【チャドの民兵(トロボロ)】
「分かりました。」
【ナレーター】
“トロボロ”の兵士たちはさらに別の村に向かいます。何者かに襲撃されたという情報が入ったからです。私たちは真相を確かめるため、彼らのトラックに乗り込みました。「ジャンジャウィードの民兵がスーダンのダルフール地方から国境を越えてやって来たに違いない」と“トロボロ”は確信しています。
【チャドの民兵(トロボロ)】
「スーダン人の遺体があります。あそこです。」
【ナレーター】
前方にスーダン人と馬が横たわっています。スーダンの民兵組織がチャドにやって来ている証拠です。
【チャドの民兵(トロボロ)】
「馬に乗ってやって来たジャンジャウィードです。」
【ナレーター】
ジャンジャウィードは血に飢えた殺戮集団と言われています。主にアラブ系の民兵で構成され、馬やラクダにまたがってアフリカ系住民の村を襲います。村人を皆殺しにし、家畜を奪い去り、持ち去れない物は徹底的に破壊するのです。
これは2007年1月に撮影されたスーダンの独立記念日を祝う式典の映像です。スーダン政府軍の車両に並走するジャンジャウィードの姿が映っています。このように彼らの映像が公開されるのは非常に珍しいことです。上空を飛び交っているのは政府軍のヘリコプターです。
2003年以来、ジャンジャウィードはスーダン政府の支援のもと、ダルフール地方の村々を破壊してきました。ダルフール地方のアフリカ系住民はアラブ系のスーダン政府に対して、石油などの資源による利益を公平に分配するよう要求してきました。しかし当局はそれをはねつけ弾圧に乗り出したのです。ティエロ村やマレナ村のように紛争はチャド国内へと広がってきています。
生き残った村人たちは“トロボロ”の兵士が用意したトラックで村から脱出しました。失望し困惑した表情を浮かべる村人たち。村長のハミスもまた深い悲しみを抱えています。
【マレナ村ハミス村長】
「頭の中が真っ白で何も考えられません。今はもう神に身を委ねるだけです。私たちの運命は神様がお決めになるでしょう・・。」
【ナレーター】
“トロボロ”のトラックは西にある難民キャンプを目指します。キャンプへ向かう途中、突然、兵士たちがトラックから降り、穴を掘り始めました。路上に横たわる女性の遺体を見つけたからです。難民キャンプへと逃げる途中に力尽きて息絶えてしまったのでしょう。兵士たちは間に合わせの墓を用意しました。墓の上に目じるしのための枝を乗せて埋葬します。
“トロボロ”の兵士たちによると、遺体が散乱している虐殺現場は他にもあるそうです。この日は日没が迫っていたため案内してもらうのは断念し、彼らと別れました。“トロボロ”は国境付近のパトロールに戻って行きました。
翌日、人気のない土地を延々と走り続けた私たちは、難民キャンプへと移動する人々の集団に遭遇しました。ジャンジャウィードの追手を逃れてきた人々です。国境付近のおよそ30の村が破壊され、生き残った人々が集団で避難しています。目的地はUNHCR(国連難民高等弁務官事務所)が運営するククの難民キャンプです。大勢の避難民が押し寄せています。彼らは3日間ほとんど飲まず食わずの状態で歩き続け、このキャンプにたどり着きました。極度の空腹と疲労感で希望さえも失っています。
難民キャンプでは食糧だけでなく、仮住まいのテントを張るためのビニールシートや石鹸も配られます。「もっと大きな声で・・」(トランシーバーで話す)フェデリカはイタリアの支援団体インターSOSの配給責任者です。
【インターSOS フェデリカ・ビオンディ】
「人が殺到して危ないから、ゆっくり進ませて・・。」
【ナレーター】
配給の列は途絶えることはありません。
【インターSOS フェデリカ・ビオンディ】
「ここでは9000人ほどの避難民を収容しています。ティエロとマレナの村から逃げて来た人たちです。」
【ナレーター】
45歳のフェデリカは長年、アフガニスタンやアンゴラなどの紛争地域で活動を行ってきました。数々の人道危機を見てきた彼女でも「ここの惨状には衝撃を受けた」と言います。
【インターSOS フェデリカ・ビオンディ】
「ほとんどの人が着の身着のままで村から逃れて来ます。配給の豆を入れるような小さな入れ物一つ持って来ることができなかったんです。」
【ナレーター】
ここ数日間に難民キャンプに着いた9000人のほとんどが女性と子どもです。男性の多くは今も行方不明です。人々は猛暑の中、何日も歩き続けたため、ひどく疲れきっています。(赤ちゃんたちが泣いている映像)
【インターSOS フェデリカ・ビオンディ】
「今朝、新しいテントを設営しました。夕べ赤ん坊を産んだばかりの女性がいるので、そこで休ませています。」
【ナレーター】
難民キャンプの中にビニールシートでテントを張るハミスの姿がありました。襲撃に遭ったマレナ村の村長です。
【マレナ村ハミス村長】
「ここに身を寄せるしかありません。生きていくためには他に方法がないんです。村に帰るのは危険すぎますからね。しばらくの間はこのテントが我が家ですよ。」
【ナレーター】
ハミスは生き残った妻や子どもたちと再会することができました。
【マレナ村ハミス村長】
「あそこにいるのが私の父です。紹介しますよ。年配の人はほとんど亡くなってしまいましたが、父は奇跡的に生き残りました。燃えている家から間一髪で助け出すことができたんです。」
【ナレーター】
子どもたちのうち4人が助かりました。(まだ幼子です)
【マレナ村ハミス村長】
「この子がヌバ、こっちがシリツク、ザラとムハマドです。(子どもが『パパ、違うよ、バドゥだよ。ムハマドじゃないよ。』)ごめん、ごめん・・。」
【ナレーター】
女性たちが水の支給を受けるために集まっています。バケツ1杯の水をもらうのに5時間も待たなければなりません。難民のファンナも順番を待っています。
【難民ファンナ】
「これでは足りないけど仕方ありません・・。」
【ナレーター】
ファンナには4人の子どもがいますが、1日で使える水の量はバケツ1杯だけです。夕食の支度をするためのたき火が難民キャンプの夜を照らす唯一の灯りです。配給を逃してしまったファンナは、他の難民から雑穀を少し分けてもらいました。しかしこれでは一家全員の空腹を満たすことはできません。
【難民ファンナ】
「これで全部です・・。」
【ナレーター】
これがこの日の唯一の食事でした。
【難民ファンナ】
「子どもたちの分が足りなくなるので私は食べません。とてもつらいです・・。すべてジャンジャウィードのせいです。」
【ナレーター】
UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)は緊急の対応を迫られています。この数日間にこの地域で家を追われた人々は数千人におよび、今後の見通しがまったく立たない状況です。救援活動にあたる人々も、今後十分な支援を続けられるのか、悲観的になっています。
【UNHCR広報担当 マシュー・コンウェイ】
「この状態が長引けばじきに私たちの支援は追いつかなくなります。配給もいき渡らなくなるでしょう。それにあと1〜2ヵ月したら雨季に入ります。それまでに村へ戻って畑の収穫作業を終わらせないと、今年彼らが育ててきた農作物はすべてダメになってしまいます。そうなれば深刻な食糧不足に陥り、大規模な飢餓が起こることが予想されます。」
【ナレーター】
チャドの東部全域に点在する難民キャンプには、すでに何十万もの人々が収容されています。そのほとんどがスーダンのダルフール地方から逃げて来た人たちです。中には4年以上このような難民キャンプで暮らしている人もいます。避難生活の長期化に伴い、学校などの施設も設置されました。
【教師】
「今日は記者の皆さんが来ています。スーダンで家族に何があったか知りたいそうです。」
【生徒】(中学生くらいの男の子)
「ジャンジャウィードに姉さんを殺されました。5人の男が次々と姉さんに乱暴したのです。連中は姉さんを連れ去り、撃ち殺しました・・。」
【教師】
「(一人一人紹介する)彼は父親を、彼は叔父さんを、彼女は祖父を、妹を殺された。彼は妹を殺された。君は?君もか、姉妹・・。」
【記者】
「みんな家族を・・?」
【教師】
「そうです。着席。」
【ナレーター】
どの生徒も過酷な経験をしてきました。広大なアフリカで起きている悲劇の縮図です。一体何故、これほど深刻な暴力の連鎖が起きてしまったのでしょうか?
(2)に続く
*'08 5/20 NHKBS1「BS世界のドキュメンタリー」
潜入ルポ ダルフール 隠された真実(2)
http://aoinomama13.seesaa.net/article/97538791.html






