家族の皆様方、無事に居られるでしょうか。長い間、心配を掛けて済みません。私と松木さん(京都外大大学院生)は元気です。途中で合流した有本恵子君(神戸市出身)共々、三人で助け合って平壌市で暮らして居ります。事情あって、欧州に居た私達はこうして北朝鮮にて長期滞在するようになりました。基本的に自活の生活ですが、当国の保護下、生活費も僅かながら月々支給を受て居ます。
但し、苦しい経済事情の当地では、長期の生活は苦しいと言わざるを得ません。特に衣服面と教育・教養面での本が極端に少なく、三人供に困って居ります。取り敢へず、最低、我々の生存の無事を伝へたく、この手紙をかの国の人に託した次第です。とに角、三人、元気で暮らして居りますので御安心して下さる様、御願い至します。
松木さんの実家(熊本市)、有本君の実家(住所と電話番号の記載)の方へも連絡願います。更に、この手紙を送ってくれた方へ、そちらからも厚く御礼をしてくれる様御願いします。息子 亨より 平壌にて
(資料より一部抜粋)
1980年から1983年にかけてヨーロッパに留学・旅行中の日本人3名が相次いで失踪し、行方不明になりました。札幌市在住の石岡亨さん(男・当時22歳)、熊本市在住の松木薫さん(男・当時27歳)、神戸市在住の有本恵子さん(女・当時23歳)の3人です。

1988年9月に突然、石岡亨さんから札幌の家族のもとにポーランド経由で手紙が舞い込み、3人が北朝鮮にいることが分かりました。手紙には3人のパスポート番号が記され、スナップ写真などが同封されており、本人からのものであることが確認されました。
この手紙を受けた家族たちは、早速、外務省に帰国できるよう北朝鮮政府への働きかけを請願し、またマスコミにも訴えました。各方面から「騒ぎ立てると、日本政府の交渉がかえってうまくいかない」というような忠告(圧力?)もあったといいます。
このヨーロッパでの日本人3名の失踪事件は、「よど号」ハイジャック犯グループも関与した北朝鮮による計画的な拉致事件であることが明らかになっています。




