「あっ、金総書記が見えました」(今月2日平壌)先週、南北首脳会談で突然、盧武鉉大統領を出迎えて驚かせた金正日総書記。「一日(滞在を)延ばすことを提案します」(金正日総書記)「警護や儀典とも協議しなければ・・・」(盧武鉉大統領)大統領に滞在延長まで提案、この謎の行動を解くカギは7年前の首脳会談にあった。我々は大統領に随行して訪朝した大物の取材に成功。歴史的会談の裏では壮絶な死闘が繰り広げられていた。「金総書記は『まず統一問題を課題にしよう』と提起した」
今回、盧大統領が観覧したマスゲーム、これにも重大な意味があった。「金日成廟の参拝はできないので、マスゲームの観覧を受け入れた」(ジャーナリスト)7年前、金総書記の狙い通りに行動し策にはまった政治家がいた。「完全に金正日総書記の演出にしてやられて術中にはまってしまったんじゃないかと・・・」(同行取材記者)南北首脳会談で何が起きたのか。水面下の暗闘、徹底追跡する―。
緊急分析! 大統領と総書記 〜南北首脳会談 水面下暗闘の真相〜
【アナウンサー・寺崎貴司さん】(スタジオにて)
「特集は先週行われた南北首脳会談の水面下の戦いに迫ります。」
【女性アナウンサー】
「解説は早稲田大学の重村教授です。よろしくお願いします。」
【早稲田大学・重村知計教授】
「よろしくお願いします。」
【アナウンサー・寺崎貴司さん】
「この盧武鉉(ノ・ムヒョン)大統領の3日間の訪朝では様々な予想外の出来事がありましたが、その裏には一体何があったのでしょうか?こちらのVTRをご覧ください。」
緊急追跡!首脳会談 金総書記“仕掛け”の秘密
【取材ディレクター・北舘史生さん】(VTR)
「盧武鉉(ノ・ムヒョン)大統領を乗せた車はこれから軍事境界線を越えて北朝鮮へ向います。」
【ナレーター】
先週、韓国の大統領として初めて軍事境界線を歩いて越え北朝鮮に入った盧武鉉大統領。大統領は首脳会談に臨む意気込みをこう語った。
【韓国・盧武鉉大統領】(VTR)
「私はこの度、大統領としてこの禁断の線を越えていきます。平和と繁栄の道へ進むきっかけとなるよう努めます。」
【ナレーター】
今回の訪朝でまず注目されたのは、北朝鮮が大統領をどのように迎えるかだった。
【大統領府報道官】(9月21日)
「平壌の入口で金永南(キム・ヨンナム)氏が出迎えることになっています。」
【ナレーター】
韓国政府の事前のでは平壌で盧大統領を出迎えるのは金正日総書記ではなく、ナンバー2の金永南氏(最高人民会議常任委員長・党内序列2位)だと言っていた。しかし歓迎式の会場が1時間前に急遽変更され、そこに現れたのは―。
【韓国YTN記者】(VTR)
「あっ、金総書記が見えました。」
【ナレーター】
ここで金総書記は盧武鉉大統領と片手で儀礼的に握手しただけで、笑顔すらほとんど見せることはなかった。また、翌日(10月3日午前)の最初の首脳会談でも笑顔こそ前日に比べてあったものの・・・。
【韓国・盧武鉉大統領】(VTR)
「総書記自らお迎えいただいてありがとうございます。」
【北朝鮮・金正日総書記】
「大統領が来られたのに、病人でもない私が寝ているわけにはいかないでしょ。」
【ナレーター】
依然として金総書記のクールな言動は変わらなかった。今回、テレビで見ていた韓国市民の反応は冷静だった。
【韓国の若い男性】
「会うことが重要なのではなく、会って何を話すかが重要なのです。」
【ナレーター】
2000年(6月)の第一回首脳会談では、金正日総書記は自ら空港まで出向き、金大中(キム・デジュン)大統領を迎えたが、それを韓国のテレビは興奮してこう伝えた。
【韓国KBS記者】(VTR)
「金正日総書記と金大中大統領が歴史的な対面をしている瞬間です。」
【ナレーター】
テレビでこの対面を見ていた韓国の市民も一様に感動に包まれた。
【韓国の若い女性】(2000年6月)
「とてもうれしい。南北統一がすぐにでも実現しそうな気がします。」
元大統領側近明かす 金総書記のマル秘戦術
【ナレーター】
今回我々は、2000年の首脳会談で金大中(キム・デジュン)大統領と共に訪朝した黄(ファン)氏を取材することができたが、黄氏は驚くべき事実を語った。
【黄源卓(ファン・ウォンタク)氏】大統領府外交安保首席秘書官(当時)
「金正日総書記が空港に出迎える、という話を我々は知らされていませんでした。」
【ナレーター】
2000年は金大中大統領がソウル空港を出発する時点でも北朝鮮側の誰が迎えに来るか事前に決まっておらず、金総書記は出迎えないかもしれないと考えていたという。北朝鮮は友好国・中国の指導者が訪朝した時(1990年)は最高指導者が出迎えてきたが、90年以降、金正日氏は空港まで出向かなくなったためだ。
ところが2000年、金大中氏が空港に着くと―。
【黄源卓(ファン・ウォンタク)氏】大統領府外交安保首席秘書官(当時)
「到着すると(金総書記が)いたのです。」
【ナレーター】
今回も前回同様、金総書記は予告せずにその姿を現して盧大統領を驚かせた。こうした度重なるサプライズとスケジュール変更、これこそが金総書記が交渉を有利に進め、ペースに巻き込むための手段だった。
南北首脳会談知られざる真相 @盧武鉉大統領のマスゲーム観覧
【ナレーター】
今回、盧武鉉(ノ・ムヒョン)大統領は、2000年に金大中(キム・デジュン)氏も観なかったマスゲームを金永南(キム・ヨンナム)氏と共に観覧。歓声に笑顔で応えた。10万人が動員され上演されるマスゲームは「独裁国家の象徴」と言われ、「人権侵害」との批判もある。
さらに問題なのは、マスゲームの内容が金親子の60年に渡る統治を賛美するという北朝鮮の体制宣伝となっていることだ。同行した韓国人記者の報道によれば、盧大統領は観覧中に二度起立して拍手したという。韓国の保守系シンクタンクは言う。
【保守系シンクタンク・洪官熹(ホン・グァンヒ)氏】
「マスゲームは北朝鮮の体制を宣伝し守るためのものですが、それを韓国の大統領が大勢の閣僚を連れて観覧することは、韓国のアイデンティティーに係わる深刻な問題です。」
【ナレーター】
実は7年前訪朝し、マスゲームを観覧したことで後に激しい批判を浴びた政治家がいた。オルブライト国務長官だ。
【オルブライト米国務長官】(VTR)
「美しい街に来られて喜ばしく思います。」(金正日総書記とにこやかに握手)
【ナレーター】
クリントン政権末期の2000年、大統領訪朝のための下交渉に出向いたオルブライト長官は、マスゲームを観て拍手喝采。帰国後、こう批判を浴びた。
「奴隷状態にある10万人が、オルブライト長官と世界一抑圧的な独裁者のためマスゲームをやらされている最中、長官が微笑み、その顔をカメラに写させたことに我々は驚かされた。」(「ワシントン・ポスト」2000年10月27日付けから)
【ナレーター】
オルブライト長官が観たマスゲームのために練習に参加した人の証言を我々は聞くことができた。
【マスゲームの練習に参加した人】
「練習はとても過酷です。本番は人工芝の上ですが練習はコンクリートの上でやるため、膝が擦り切れて血が出るのを我慢しながらやるので辛いのです。(便所に行けないので)小便用のビンとオムツを用意しろと言われました。」
【ナレーター】
実は今回、韓国政府は会談前から盧大統領がマスゲームを観に行くことを発表。寄せられる批判にこう返していた。
【李在禎(イ・ジェジョン)統一部長官】(VTR)
「学校で生徒たちが運動会の練習をすることを虐待と呼びますか?」
【ナレーター】
では、何故盧大統領はマスゲームを観に行ったのか?韓国の記者は言う。
【中央日報・イェヨンジュン記者】
「韓国政府関係者は、北朝鮮側の要求をすべて拒否するのは無理だと判断しました。しかし大統領の“金日成廟参拝”は絶対にできません。その代わりマスゲームの観覧なら飲んでもいいと判断し観覧することに決めた、と言いました。」
【ナレーター】
「マスゲーム観覧は“金日成廟参拝”を避けるための条件だった」と言うのだ。これはどういうことなのか?
南北首脳会談知られざる真相 A「金日成廟」参拝要求
【ナレーター】
北朝鮮の錦繍山(クムスサン)記念宮殿には、ロシアのレーニン廟と同じように故金日成主席の遺体が生前の姿のまま祭られている。北朝鮮の友好国の首脳が訪朝するとこの金日成廟を訪れ献花するのが習わしだ。今回の首脳会談でも北朝鮮は事前折衝で盧武鉉大統領に金日成廟に参拝するよう求めてきたという。北朝鮮が参拝にこだわる理由は何なのか?
【ジャーナリスト・池東旭(チ・ドンウク)氏】
「金日成廟、あれははっきり言って一種の踏み絵なんです。北の体制を認めるか認めないかということなんですよ。朝鮮戦争は正義の戦争であったと、これを認めることになるわけなんです。」
【ナレーター】
韓国では朝鮮戦争を起こした故金日成主席への根強い反感があり、廟への参拝は金主席の行為を認めることになるため受け入れがたい要求だ。2000年の首脳会談前にも北朝鮮から要求があったという。
【金大中(キム・デジュン)大統領】(2001年)
「訪朝する際、実は非常に厳しい状況に置かれていました。北朝鮮から金日成廟への参拝を求められていたのです。」
【ナレーター】
韓国側は参拝を断ったが、両首脳が空港で会った後も金総書記は諦めず、何と大統領が乗った車に金総書記は乗り込んで来て直談判したという。会談に同行して取材した記者は言う。
【金民培(キム・ミンベ)朝鮮日報政治部長】
「(車中で)金総書記は金大統領に金日成廟への参拝を要求し続けました。(金大統領は)『今回は、やめましょう』と我慢強く説得しました。」
【ナレーター】
その後も大統領の滞在中に金総書記は執拗に参拝を求め、ようやく諦めたのは2日目の晩餐会だった、と折衝役の林東源(イム・ドンウォン)氏は言う。
【参拝問題折衝役・林東源(イム・ドンウォン)氏】(2004年)
「(金総書記は)『金日成廟に参拝しなくてもいいですよ。林さん、あなたの勝ちだ』と言いました。」
【ナレーター】
(晩餐会での映像)まさにこの瞬間、金総書記が林氏に「参拝しなくていい、あなたの勝ちだ」とささやいたという。結局2000年の時は「金大統領の金日成廟の公式参拝はなかった」と言われている。しかしこの半年後、北朝鮮の狙い通り金日成廟の参拝を行なった大物政治家がいたのだ―。
【米国務省通訳(当時)】
「(金日成廟への)訪問がなければ、あれほど長時間、金総書記と会談できなかったと思います。」
【ナレーター】
第一回南北首脳会談の半年後(2000年10月)訪朝したオルブライト国務長官。実は平壌に着いた時、オルブライト氏は大変な問題を抱えていた。肝心の金総書記との会談がまったく決まっていなかったのだ。同行取材した鈴木悟元ワシントン市局長は言う。
【テレビ朝日・鈴木悟元ワシントン市局長】
「平壌に着いた段階でも日程はまったく決まっていなかったんですね。金正日総書記本人とは会談できるのかどうかも含めてまったく決まってなかったのです。オルブライト長官が(平壌に)入ってからも何もまだ決まってなかったという状況でした。」
【ナレーター】
到着後、オルブライト氏は金日成廟に参拝した。実はオルブライト氏は「訪朝前から金総書記との会談の確約も取れず、廟の参拝だけを強く求められ、行かざるを得なかった」という証言がある。オルブライト氏に同行した元国務省通訳の金東賢(キム・ドンヒョン)氏だ。
【元米国務省通訳・金東賢(キム・ドンヒョン)氏】
「姜錫柱(カン・ソクチュ 第一外務次官)は(事前折衝で)言いました。『オルブライト氏が廟に参拝したら、父親の廟を訪問してくれたことに金総書記は大いに喜ぶでしょう』」
【ナレーター】
それでも参拝の後、金総書記側から連絡もなくオルブライト氏は幼稚園を訪れ、金総書記と会えるのか不安を抱えながらそれを押し殺して子どもたちと踊っていた。やがて連絡が入る―。
【テレビ朝日・鈴木悟元ワシントン市局長】
「昼前に『すでに入っていた会談はすべてキャンセルする、その代わりに午後3時から金正日総書記と会う』という連絡が入ったんですね。これは驚きました。」
【ナレーター】
通訳だった金氏もオルブライト氏が「廟に参拝した後で金総書記との会談が決まった」と証言する。
【元米国務省通訳・金東賢(キム・ドンヒョン)氏】
「金総書記は『オルブライト長官が金日成廟を訪問した』と聞くと、即座に(会談すると)決断しました。(金日成廟への)訪問がなければあれほど長時間、金総書記と会談できなかったと思います。」
【ナレーター】
金日成廟を参拝したためか、オルブライト氏は金総書記と初日だけで6時間という異例の長時間会うことができた。これほど父親の廟に参拝することをこだわっている金総書記。では、今回、盧武鉉大統領が廟に参拝しなかったことは韓国側が筋を通した結果と言えるのか?池氏は言う。
【ジャーナリスト・池東旭(チ・ドンウク)氏】
「何か欲望とか自分の利益になるような会談をやれば、相手方は必ず足元を見透かして逆手に出ますよね。一から十まで北のイニシアティブによって韓国は引きずり回されたと見ています。」
【ナレーター】
「韓国側は北朝鮮に振り回されていた」と言う。何故そう言えるのか?
(2)に続く
*10/7 テレビ朝日「サンデープロジェクト」
緊急分析! 大統領と総書記 〜南北首脳会談 水面下暗闘の真相〜(2)
http://aoinomama13.seesaa.net/article/61128232.html



