【めぐみ 13年間のアルバム より】 取材・文:小山唯史(こやまただし)
*めぐみ 13年間のアルバム(5)やはり、めぐみなのね
http://aoinomama13.seesaa.net/article/58826001.html
続き
第六回 再び5人そろっての旅を
横田家の旅の記憶はすべてが輝いている。ただ一人“見知らぬ北の国”へ、自分の意思とは無関係に連れ去られためぐみの、“長い旅”を除いて―。
横田家は一家でよく旅をした。左下の写真は、佐渡へ旅行したときのもの。めぐみは小学6年生だった。1976年夏。新潟に引っ越してきてすぐの夏休みだ。

*昭和51年夏、佐渡にて(撮影・滋)
佐渡における船の玄関口・両津港に近い加茂湖の国民宿舎に泊まり、翌日は島の西北部の相川方面へ。金の採掘で有名な佐渡金山を訪ね、尖閣湾では遊覧船を楽しんだ。
しかし、この旅が、一家5人揃った最後の家族旅行となってしまう。翌年秋、めぐみは忽然と姿を消してしまったのだ。
自殺や家出の可能性も考えて、警察は、佐渡汽船の乗客名簿まで調べた。家族で旅した思い出の地を選んだかもしれないと。だが、名簿に、それらしき名は見当たらなかった。
北朝鮮による拉致だと分かるのは失踪から20年もあとのことだ。それまでの間、滋も早紀江も、生殺しのような年月を生きてきた。事件か事故か。あるいは自殺か家出か。手がかりは何一つない。霧の中を手さぐりで歩むような無限の日々。滋も早紀江も、悲しみぬき苦しみぬいた。
失踪は1977年11月15日。めぐみ13歳。そのときから、横田家は旅をしない一家になった。
「いつ、めぐみが戻ってくるかもしれない。そのときは、必ず家に居てあげたい」
滋も早紀江も思いは同じだった。
知り合いの結婚式、葬式・・・どんな用事でも、夫婦一緒に出かけることはなくなった。どちらかが必ず家に残った。めぐみがいつ帰ってきてもいいように、門灯は明るいものに換え、一晩中、つけっぱなしにした。新潟に住んでいたあいだ、1日も欠かさず。
新潟に来る前の広島時代は、周辺の観光地へ、一家で本当によく旅をした。萩、津和野、宍道湖、浜田、大山・・・。計画は滋が立てた。
「一番楽しかった時代」
滋も早紀江も、そして当時まだ幼なかった双子の弟たちも、そう口を揃える。そんな、ある年。バスに乗って山陰地方の海岸に行き、民宿に泊まって海水浴を楽しんだ帰りのこと。めぐみが、杭に鎖で繋がれている猿を長い棒でからかったことがある。まねして手を出した弟たちは、棒が短すぎたので猿につかまってしまった。頭の上に乗られて帽子を取られたり、ひっかかれたり。
めぐみは、その光景に大笑いしながらも、あわてて両親を呼んだ。哲也の膝には、いまもそのときの傷が残っている。
そんな“痛い経験”も含め、旅の記憶はすべてが輝いている。ただ一人“見知らぬ北の国”へ、自分の意思とは無関係に連れ去られためぐみの今も帰路につけずにいるその“長い旅”だけを除いて―。
そして今、横田家は日本中を“旅”する一家となった。1977年、めぐみが北朝鮮にいると分かったときから。滋のメモ用紙には細かな文字で予定がびっしり記されている。どんな遠くの、どんな小さな集会にも駆けつけ、マイクを握り「拉致問題を忘れないで」と訴える。
横田家の“旅”は終わらない。滋のメモ用紙に、5人揃った家族旅行の予定が、再び書き込まれる、その日までは。
*第七回 1977年という年 に続く
*めぐみ 13年間のアルバム(7)1977年という年
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