【めぐみ 13年間のアルバム より】 取材・文:小山唯史(こやまただし)
*めぐみ 13年間のアルバム(4)二つに結った髪
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続き
第五回 やはり、めぐみなのね
早紀江は思わず写真を手でさすり「めぐみちゃん、こんなところにいたの!?」と呼びかけながら涙を流した。
2004年11月、北朝鮮は3枚の「横田めぐみ」の写真を、日本側に提出した。日朝実務者協議の席だ。一緒に出してきた“遺骨”はニセモノだった。写真は3枚のうち1枚だけが室内の撮影で、拉致後1年以内に撮ったと思われるもの。おびえたような視線をカメラに向けている。
その写真を見た瞬間、母の早紀江は思わず写真を手でさすり、「めぐみちゃん、こんなところにいたの!?」と呼びかけながら涙を流した。13歳で急に行方不明となった当時、必死に探し求め続けためぐみの姿が、そのまま、そこにあったからだ。
双子の弟たちも、官邸近くの一室で声をあげて男泣きに泣いた。
残り2枚は成人後のもの。木立を背景に、道端に立つ全体像。顔は小さくて表情がよく分からない。そもそも大人になってからのめぐみがいったいどんな顔になったのか、家族の誰も知らないままなのだ。自宅に帰った横田滋・早紀江夫妻は、大きなルーペを取り出して、写真の顔を何度も何度も、見つめ直した。
「めぐみちゃんに、違いない」
2枚のうちの片方、白いコート姿の写真については、早紀江はいち早く確信していた。「独身時代」とされる写真だ。右足を少し前に出し、爪先を外側に向けた立ち方。それは小学6年の夏に自宅の玄関前で撮った写真(前頁)と、そっくりだった。

*昭和51年、新潟の自宅玄関前にて(撮影・滋)
3歳から中学1年の夏まで、ずっとバレエを続けていためぐみ。片足を前に出した、そのスッとした立ち方こそ、写真を撮るときのめぐみの特徴なのだ。体の前で両手を合わせるしぐさも同じだった。
早紀江は写真に語りかけた。
「やっぱり、めぐみちゃんなのね」
1976年夏、横田家は滋の転勤にともなって広島から新潟に引っ越してきた。めぐみにとっては小学6年途中での転校。新しい自宅は、広い庭の付いた1戸建てだった。その玄関前で記念に撮った1枚。
めぐみが着ているのは、新潟行きのために買ったオシャレ着だ。「新しい町に着て行く服を、探して」という女の子らしい願いのために、一家で買い物に出かけて選んだ服。
この頃まで、めぐみの服は父の滋がよく買っていた。それは滋の楽しみだった。女の子らしい可愛いカッコウをさせたい。今の若い子が着ている、流行の服を着せたい。滋は、めぐみと一緒に出かけ、娘のために服を選んだ。めぐみは、むしろオーソドックスな服を好んだが、父親に買ってもらった服を素直に着てもいた。まだ、父親にも従順な年頃。
めぐみが北朝鮮に拉致されたのはそんな早い時期のことなのだ。
カメラが趣味の滋は、めぐみを撮るときは、きれいに写るようにと、みずからスカートの後ろを洗濯バサミでつまみ、服のラインを整えるほど熱心なカメラマンだった。
それほど好きなカメラ、それほど大好きなめぐみを撮るという行為。その楽しみが滋の手の届かないものとなってから、既に27年余が経つ。
北朝鮮が出してきた3枚の写真。そのシャッターを押したのは、言うまでもなく、滋ではない。
そんな、もう一つの“陰のアルバム”を作った者たちを、我々はけっして許してはならない。
*第六回 再び5人そろっての旅を に続く
*めぐみ 13年間のアルバム(6)再び5人そろっての旅を
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