【めぐみ 13年間のアルバム より】 取材・文:小山唯史(こやまただし)
*めぐみ 13年間のアルバム(1)忘れられない温もり
http://aoinomama13.seesaa.net/article/58354610.html
続き
第二回 「御所ちゃん、来たね」
「意思表示がはっきりしてる子やね」と医師を笑わせた幼き日のめぐみ。やだ、やだ― めぐみが、どこかで叫んでいる。
よく太って、元気そうな赤ちゃんね― めぐみを目にした人々は、ベビーカーを押す早紀江に、たいていこんなふうに声をかけてくれた。
めぐみが、誕生から1年半近くを過ごした名古屋。自宅のそばには、美しい鶴舞(つるま)公園があった。その園内は、早紀江にとって、めぐみとの幸せな散歩コース。休日ともなれば、かたわらには、カメラを手にした夫・横田滋が必ず寄り添っていた。

*昭和40年、名古屋の鶴舞公園にて早紀江と(撮影・滋)
生まれたときは3260グラム。普通の体重だったけど、よく飲みよく食べて、元気良くどんどん太っていっためぐみ。この写真の頃(約10カ月)が一番丸々としていた。
当時通っていた病院では、看護婦さんたちが「御所(ごしょ)ちゃん」と呼んでくれていた。色白で、まん丸い顔。眠っていると目がヒュッと細かったから、「まるで御所人形みたい」と言われていたのだ。看護婦さんは、いつも「あ、御所ちゃん、来たね」と迎えてくれた。
生後まもなく「斜頸」が見つかった。首の筋肉が固く縮んでしまう疾患。筋肉を揉みほぐすマッサージを受けるため、週に3日、半年近くも病院に通った。こんなふうに公園の中の道を通って。病院は鶴舞公園を抜けてすぐのところにあった。
早紀江の脳裏には、ともに過ごした13年間、おりおりに見せためぐみの表情がいくつも浮かんでくる。「御所ちゃん」だった時代。初めて立ち上がれたときに見せた嬉しそうな顔。二つに結ってあげた髪を頭の両端で揺らしながら、「ママ〜ッ」と走り寄ってきた幼い日のめぐみ。よく笑い転げていた、あんなにも明るかった小学生のめぐみ・・・。
斜頸を治療するためのマッサージをいやがって、真っ赤になって怒るように泣いていためぐみの姿も、そんな忘れられない思い出の一頁だ。他の赤ん坊たちは、しばらくすると諦めて泣きやんだけど、めぐみだけはいつも最後まで「やだ! やだ!」と大きな声を出し続けていた。「やんちゃだな。なかなか意思表示がはっきりしている子やね」と、お医者さんは笑っていた。
やだ、やだ―。
めぐみが、どこかで叫んでいる。
北朝鮮で、めぐみはいったいどんな生活を強いられ、どんな思いでいるのだろう。今日はどうしてるの?棒で叩かれてはいないかしら?
いま、一日のはじまりを、毎朝必ずこんな思いから始めなければならないことが早紀江には何より辛い。
そして、今日も祈る。めぐみちゃん、あなたの持ち前の元気さと、明るさと強さで頑張って。しっかり生き抜いて。なんとか元気でいて。
たくさんの人々に可愛がられ、助けられて育った、めぐみ。めぐみ自身も、周囲の人にあたたかく接する子だった。そんなあなたなら、どんなところでも、きっと強く生き抜いていてくれるに違いない。
「お母さん、私は、ここにいるわよ。死んだなんて嘘。早く助けに来て・・・ 私には、めぐみがそう叫んでいるように思えてなりません。日本にいる私と同じ月、同じ星を、北朝鮮で眺めながら、今日も叫んでいる。きっと助けに来てくれると信じて、待っているに違いないんです。国は、命懸けで救出に取り組んでほしい」
めぐみが北朝鮮によって「死亡」とされてから以降、とくに最近の各地での集会や講演で、早紀江は、こう訴え続けている。
*第三回 「タッくん」と「テッちゃん」 に続く
*めぐみ 13年間のアルバム(3)「タッくん」と「テッちゃん」
http://aoinomama13.seesaa.net/article/58620308.html
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