2007年09月05日

9/2 TBS「報道特集」脱北拉致被害者 祖国へ苦難の帰還

*9/2TBS放送の「報道特集」の一部を文字化しました。番組は韓国の拉致問題についての内容で、放送は約20分間でした。

「世の中にこんなことがあるのか!」拉致被害者がついに脱北、しかし祖国は・・・。「あなたは韓国政府に税金を納めたのか!」連れ去られた自国民への仕打ち、そして。「本当に本当にうれしい・・・」脱北拉致被害者、その苦難の帰還を追った。

苦難!脱北した拉致被害者たち

【司会者・田丸美寿々さん】(スタジオにて)
 「こんばんは、報道特集です。昨日今日と行われました米朝協議でも相変わらずのしたたかさを見せつけている北朝鮮なんですが、来月行われる予定の韓国との南北首脳会談でも、さらに影響力を見せていきたい狙いがあるようです。で、その南北首脳会談でもしかしたら進展が見られるかもしれない問題、韓国人の拉致問題についてまずはお伝えしたいと思います。これは日本にとっても気にかかる問題です。」

苦難!!脱北した拉致被害者

【ナレーター】
 出発する列車。今年5月(17日)に行われた南北縦断鉄道の試験走行です。軍事境界線を列車が通過したのは56年ぶりのことです。しかし・・・。「こいつら放せと言っているんだ!」列車の走行に激しく抗議する反北朝鮮団体。太陽政策を推し進める盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権も糾弾しています。その中に・・・。

【韓国拉致被害者家族】VTR
 「私たちは30年以上北朝鮮にいる親兄弟に会えないでいる。政府は北朝鮮に援助するばかりで、拉致被害者に対して何の成果もないじゃないか!」

【ナレーター】
 座り込んで政府に抗議する拉致被害者の家族。韓国人の拉致問題は国民の関心が薄く大きく広がりません。しかし実は新たな段階を迎えています。

 杖を突きながら街を歩く男性。彼の名は陳正八(チン・ジョンパル 66)、韓国人拉致被害者です。北朝鮮で35年間暮らし2001年に脱北。現在は韓国・釜山で生活しています。彼のように脱北した拉致被害者はわかっているだけで6人存在します。

【記者】
 「ここから船に乗ったんですか?」

【韓国人拉致被害者・陳正八(チン・ジョンパル)氏】
 「ここから乗って仁川(インチョン)で操業していましたが、1ヶ月後に拉致されました。」

【ナレーター】
 1967年4月、26歳だった陳正八(チン・ジョンパル)氏は黄海で操業中、武装した北朝鮮の船に襲撃されました。

【韓国人拉致被害者・陳正八(チン・ジョンパル)氏】
 「漁船だと思ったら銃を撃ってきたんです。自動小銃と機関銃でした。拉致される時、甲板長のチャさんの腹に銃弾が貫通して死亡しました。」

【ナレーター】
 船に乗った北朝鮮の兵士は漁師に偽装して接近。いきなり複数の人間が銃を乱射して威嚇したといいます。銃撃された甲板長が死亡。陳正八(チン・ジョンパル)氏ら13人は北朝鮮に連れ去られました。

 昨年度の北朝鮮人権白書によると、陳正八(チン・ジョンパル)氏のような韓国人拉致被害者は、政府が認めているだけで480人以上に上ります。日本の拉致被害者と同じように海岸から連れ去られたとされる事件もありますが、漁船で拿捕され北朝鮮に連れ去られたケースがほとんどです。

 「同じような拉致被害者を多く見た」と言う陳正八(チン・ジョンパル)氏。厳しい思想教育を受けました。

【韓国人拉致被害者・陳正八(チン・ジョンパル)氏】
 「教官に『偉大なる首領金日成同志の革命思想で武装しろ』と言われ我々はこう言います。『貫徹する、貫徹する』と。」

【ナレーター】
 思想教育の後は地方の炭鉱にある機械工場で働きました。しかし故郷のことを思い出さない日はありませんでした。

【韓国人拉致被害者・陳正八(チン・ジョンパル)氏】
 「私たちが酒を飲んだ時『故郷に帰してくれ!』と騒ぐので、幹部たちが来て『お前たちは永遠に帰れないのだから、一生懸命勉強して社会に出ることを考えろ!』と言われました。永遠に家族と別れて暮らさないといけないと思いました。」

「♪故郷が懐かしくとも 行けない身体♪」

【ナレーター】
 北朝鮮にいる当時歌っていた“故郷”という歌。陳正八(チン・ジョンパル)氏は35年間を北朝鮮で過ごし2001年に脱北。韓国に残した家族とも再会できました。しかし北朝鮮でも結婚し子どもをもうけていて、今は「北朝鮮に残した家族が心配なのだ」と言います。

 2000年に行われた南北首脳会談。両首脳は離散家族の再会などで合意しました。しかしこれによって韓国人拉致被害者が帰って来ることはありませんでした。

 その後、韓国政府は拘束されながらも思想転向しなかった“非転向長期囚”63人を北朝鮮に送還。この中には、原敕晁(はら ただあき)さんらを拉致した辛光洙(シン・ガンス)容疑者も含まれています。

脱北拉致被害者に祖国は・・・

【韓国人拉致被害者・李在根(イ・ジェグン)氏】
 「軍人が完全武装して船に上がってきて、空砲を撃ちながら『降りてこないとみんな殺す』と大声を上げました。」

【ナレーター】
 こう話すのは、1970年に拉致された漁師・李在根(イ・ジェグン 68)氏。ペンニョン島付近で漁船が拿捕され、北朝鮮に連れ去られました。

【韓国人拉致被害者・李在根(イ・ジェグン)氏】
 「機関長が『みんな死んだも同然だ!』と言って泣いていました。どういうことかわかりませんでしたが、北に行ったらその言葉通りでした。」

【ナレーター】
 李在根(イ・ジェグン)氏は工作員を養成する大学に行かされ、24時間泳ぎ続けるなどの厳しい訓練の後、結局造船関連の工場で働かされました。拉致されてから29年後の1999年、中国東北地方の農村に李在根(イ・ジェグン)氏は潜伏していました。

【記者】VTR
 「北朝鮮から脱出してこられた李在根(イ・ジェグン)氏です。いつ来られましたか?」

【韓国人拉致被害者・李在根(イ・ジェグン)氏】
 「今日来たばかりです。」

【ナレーター】
 これは脱北直後に韓国の地方局・大田(テジョン)テレビが撮影した映像です。車に乗る李在根(イ・ジェグン)氏、涙をこぼしています。中国潜伏中、彼は瀋陽の韓国領事館に行ったり、北京の韓国大使館に電話をかけて自らが拉致被害者であることを説明しました。しかしたらい回しにされ、韓国への帰還ができずにいたのです。

 青島(チンタオ)の韓国領事館員との会話も残されています。

【韓国人拉致被害者・李在根(イ・ジェグン)氏】VTR
 「あなたに迷惑をかけたくないけど、何とかして韓国に行く方法はないですか?」

【韓国領事館員】
 「あなたは税金を払いましたか?韓国に税金を納めたんですか?」

【ナレーター】
 「韓国に税金を納めたのか」と言われた李在根(イ・ジェグン)氏。絶望の中、中国で自給自足の生活をしていました。

【韓国人拉致被害者・李在根(イ・ジェグン)氏】VTR
 「私の故郷だと思ってやって来たが、同胞同士でこんなことがあるのか!耐えられない。他人にご飯を恵んでくれと言ってもこんなふうに追い返したりはしないだろう・・・」

【ナレーター】
 しかし事態は急変します。テレビ局の記者たちが取材をしていることがわかると領事館員は直ちに謝罪、帰還に便宜を図ったのです。

 現在ソウルで暮らす李在根(イ・ジェグン)氏。北朝鮮では28年、中国では2年暮らしました。彼は政府が拉致被害者を帰国させた日本のことを例に挙げてこう話しました。

【韓国人拉致被害者・李在根(イ・ジェグン)氏】
 「この国は拉致されてから脱出して『中国まで来たから助けてくれ!』と頼んでも知らん顔をする。そんな国が大韓民国以外のどこにあるのか!北朝鮮の大使館に行ってもこんな待遇はしないよ。」

【ナレーター】
 脱北した拉致被害者のほとんどが韓国政府の冷淡な対応を訴えています。その中には世論からさらに大きな批判を受けたケースがあります。

 ダンボールを集めているこの女性の夫もそんな拉致被害者の一人でした・・・。

脱北拉致被害者を待つ妻

【ナレーター】
 生活のためダンボールを集めて回るこの女性は拉致被害者の妻です。

【拉致被害者の妻・梁正子(ヤン・チョンジャ)さん】VTR
 「こんなふうに生きているのを子どもたちもわかってくれないしね・・・。」

【ナレーター】
 梁正子(ヤン・チョンジャ 66)さん。1975年に夫・崔旭一(チェ・ウギル)さんの乗った船が行方知れずとなりました。しかし20年以上経った1997年、1枚のファックスが送られてきます。そこには北朝鮮の女性と結婚し、新しい家庭を持った夫の姿がありました。

【拉致被害者の妻・梁正子(ヤン・チョンジャ)さん】VTR
 「向こうから『会いたい』と言ってくれば会いたい。でもどうやって会うの?私はお金もないしね・・・。」

【ナレーター】
 この取材を行った一昨年、夫はまだ北朝鮮で暮らしていました。しかし去年の12月、夫が「脱北した」との知らせが入ったのです。

 写真を見つめる男性。額にケガをしています。梁正子(ヤン・チョンジャ)さんと脱北ばかりの夫・崔旭一(チェ・ウギル)さんです。中国で再会しました。これを撮影したのは韓国の新聞・朝鮮日報の安剄求iアン・ジュンホ)記者です。

【朝鮮日報・安剄求iアン・ジュンホ)記者】
 「初めて会った時には北朝鮮の監視員がついてきていたので、梁正子(ヤン・チョンジャ)さんも崔旭一(チェ・ウギル)さんも再会で感激を表に出すことはできませんでした。その後、移動してから感激の再会をしたのです。」

*拉致被害者チェ・ウクイルさん、妻と感動の再会(上) 朝鮮日報より
http://www.chosunonline.com/article/20070105000039
*拉致被害者チェ・ウクイルさん、妻と感動の再会(下)
http://www.chosunonline.com/article/20070105000040

【ナレーター】
 崔旭一(チェ・ウギル)夫妻は監視員を振り切った後、瀋陽の韓国領事館に電話をしましたが、たらい回しに遭います。やっとのことで担当者の携帯電話番号を聞き出しましたが・・・。

【韓国人拉致被害者・崔旭一(チェ・ウギル)氏】VTR
 「故郷の韓国に帰って暮らすという覚悟で今北朝鮮を脱出してこちらに来ました。それで・・・、電話番号ですか?どうしてわかったかですか?」

【ナレーター】
 担当の領事館員は「携帯電話番号を誰に聞いたのか?」と問い詰めるばかりで対応しません。さらに「脱北者の問題は扱わない」と言います。

【拉致被害者の妻・梁正子(ヤン・チョンジャ)さん】VTR
 「もしもし、もしもし、崔旭一(チェ・ウギル)の妻です。拉致された崔旭一(チェ・ウギル)の妻です。本当に韓国人です。脱出してきたんです!家族が連れて帰ろうとしているんです!だから言っているじゃないですか!!」

【朝鮮日報・安剄求iアン・ジュンホ)記者】
 「奥さんは泣き続け、旦那さんは呆然自失でした。『どうか記者さん、助けてください!』と私の手を握ってその言葉しか言いませんでした。」

*韓国領事館が自国民を見捨てた! 朝鮮日報より
http://www.chosunonline.com/article/20070105000046

【ナレーター】
 安記者は朝鮮日報でこの問題を伝えました。すると領事館員の対応に大きな批判が沸き起こりました。

 韓国・仁川(インチョン)国際空港にいるのは、妻・梁正子(ヤン・チョンジャ)さん。(2007年1月)

【拉致被害者の妻・梁正子(ヤン・チョンジャ)さん】VTR
 「本当に本当にうれしいです。夫に会わせてくれたし。私にはもう夫がいるから・・・、うれしいんです。」

【ナレーター】
 今年1月、拉致被害者・崔旭一(チェ・ウギル)さんは31年ぶりに韓国に帰還しました。

脱北拉致被害者が涙の再会

【ナレーター】
 ソウルで開かれた拉致被害者や家族の集会。この席に帰還した拉致被害者・崔旭一(チェ・ウギル)さんの姿がありました。

【韓国人拉致被害者・陳正八(チン・ジョンパル)氏】VTR
 「陳正八(チン・ジョンパル)だ!」

【韓国人拉致被害者・崔旭一(チェ・ウギル)氏】
 「おお、陳正八!」

【ナレーター】
 祖国への生還を喜び合う拉致被害者たち。彼らは北朝鮮の教育機関で会い、思想教育を受けていました。苦難を共にした仲間と数十年ぶりに再会したのです。(泣きながら抱き合う映像)

【韓国人拉致被害者たち】VTR
 「本当に本当に生きていたんだなぁ・・・」
 「おれたちも来たんだ!」
 「本当に本当に生きて帰って来たんだ!」

【韓国人拉致被害者・李在根(イ・ジェグン)氏】
 「(拉致被害者)600人全員いつになったら来るんだ、もどかしいよ。」

脱北拉致被害者の叫び!

【ナレーター】
 現在、韓国政府が認める拉致被害者は480人余り。しかし「実態はそれをはるかに超える数がいる」と言われています。政府も認定していない拉致被害者が脱北し帰還するケースさえありましたが、北朝鮮は公式に韓国人拉致を認めておらず、韓国政府も及び腰です。

 拉致被害者の救出活動を続ける崔成龍(チェ・ソリョン)会長はこう訴えます。

【拉北者家族の会・崔成龍(チェ・ソリョン)会長】VTR
 「私たちの望みは生死の確認ですが、韓国政府はできないでいます。北朝鮮に要求一つしないでいるのです。だったら我々同胞は何なんですか?我々は何をしているのですか?」

分断国家の悲劇 脱北拉致被害者

【司会者・田丸美寿々さん】(スタジオにて)
 「はい、拉致被害者に対して韓国政府の対応があまりに冷淡に見えますけれども、まぁその背景はかつて冷戦時代、“分断国家”という状況下で、拉致被害者の家族も『北のスパイ』と見られて監視が付くような時代がありました。さらに近年、太陽政策になってからは今度は北朝鮮に遠慮して表立って批判ができない、という事情があります。

 拉致被害者そしてその家族たちは、厳しい時代を続けてきたわけなんですが、しかし来月の南北首脳会談では初めて韓国政府が『この拉致問題を議題として提示することを検討している』ということです。ここへきてようやく韓国政府の対応にも変化が表れてきたと言えそうです。」

(ディレクター 山本将文さん 吉田豊さん)

終わり
posted by あおいのママ at 07:10| 千葉 霧 | TrackBack(0) | 報道番組テキスト | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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