
*漫画アクション2006年4月18日号〜7月4日号で「母が拉致された時 僕はまだ1歳だった」(作画・構成/本そういち氏)に掲載された小山さんのコラムをテキストにしました。順次ご紹介致します。
*'06 9/3 テレビ朝日「スーパーJチャンネル」お母さんと言ってあげたい
http://aoinomama13.seesaa.net/article/23227718.html
【母が拉致された時 僕はまだ1歳だった より】 取材・文:小山唯史(こやまただし)
第1回 飯塚繁雄「兄として、父として」
飯塚繁雄(家族会副代表)は7人兄妹の一番上だ。末っ子の八重子が生まれたとき、繁雄は既に17歳になっていた。埼玉県内の自動車会社で働いて家計を助けながら、夜間高校にも通い始めていた。
中学時代、3年の総合テストで学年2番になるほど成績優秀だった繁雄だが、経済事情から進学を断念して就職の道を選んでいた。
写真は、八重子が5歳頃のもの。八重子は1955(昭和30)年の生まれだから、60年前後に撮影した貴重な1枚だ。まだカメラが一般に普及していなかった時代。カメラ好きの叔父(八重子の母ハナの弟)が、埼玉県川口市の飯塚家に佐渡から遊びに来たときに撮ったものだ。
背景として写っているのは当時の自宅。粗末な壁はワラと泥がむきだしになっている。この家で、両親と子供、一家9人がひしめきあい、助け合いながら暮らしていた。
末っ子だったからだろう、八重子は父親にとても可愛がられた。八重子も父親が大好きで、いつも、まつわりついていた。そんな娘を、父親は嬉しそうにだっこし、歩くときは必ず手をつないでいた。

*父に甘えた末っ子の八重子(写真は5歳頃の八重子。自宅前)
父親は病弱だった。川崎の鉄鋼会社や川口の鋳物工場で職人として働いていたが、心臓や肺を痛め、やがて重労働には耐えられなくなった。それでも家族を養うために、自分にできそうな仕事を探しては職を転々としていた。よく喘息の発作を起こしていたことを繁雄は今でも鮮明に覚えている。
八重子が10歳のとき、父親が他界した。最後の数年は、働きにも出られず家で過ごす毎日。幼い八重子にとって、父親と一緒にいられることは、かえって嬉しいことだったに違いない。その死を、八重子は他のどの兄姉よりも悲しんだ。
日本に戻ってきた拉致被害者・地村富貴恵さんから、八重子について繁雄が聞いた話がある。北朝鮮の招待所で八重子と同居していたとき(拉致直後の1年余の間)のことだ。
八重子は夜中に目を覚まし、突然「今、お父さんの霊が出てきた」と口にすることが、たびたびあったという。「お父さんが出てきて、こんなことを言った」と。
突然の拉致。見知らぬ地。人生をねじ曲げられた異様で不安な日々― そんな生活が、幼いころ甘え、早く別れてしまった懐かしい父親の幻を、呼び寄せたのだろうか。八重子の、壊れてしまいそうな心に。
そう考えると、繁雄は妹が不憫でならなくなる。
大韓航空機爆破事件を起こした北朝鮮の女性工作員・金賢姫も、一時期同居した李恩恵つまり八重子について、手記でこう語っている。
「恩恵は(誰のものとも分からぬ、土を盛っただけの道端の墓の前を)通りかかるたびに立ち止まって何分か黙祷した。タバコを一本、お墓の前に(線香代わりに)差し込んだりもした。両親(早くに死んだ父と、生きていれば高齢の母)を思い、そうするというのであった」
父親の死後、八重子にとっては、一番年長の繁雄が父親代わりとなった。「あんちゃん、あんちゃん」・・・繁雄を慕った声が、今も耳の奥に甦る。1978年6月、八重子は22歳のとき北朝鮮に拉致された。幼い2人の子供を残したまま。
*「第2回 引き裂かれた母と子」に続く
*八重子と耕一郎 2つのアルバム(2) aoi blog
http://aoinomama13.seesaa.net/article/46251376.html
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