
*'04 8/1にTBSで放送された「報道特集」を文字化しました。写真は8/22の朝霞市での講演会後に撮影させていただいたものです。
脱北者が持つ一枚の写真。写っている男性が、日本で失踪したことを示す証拠が・・・。
【司会者・田丸美寿々さん】(スタジオにて)
「ここに一枚の写真があります。これはある脱北者が北朝鮮から持ち出したというものなんですけれども、この写真の人物が日本人の拉致被害者であるという可能性が出てきました。果たして前代未聞のケースになるのでしょうか?そしてこの写真の人物は誰なんでしょうか?どんな拉致事件だったのか、どうぞご覧ください。」
独占入手! 新たな拉致被害
【ナレーター】
真夏の韓国。ここである人物と接触しました。北朝鮮から脱出して来た男性です。北朝鮮の政府機関で働いていましたが、「顔は表に出せない」と言います。彼は北朝鮮から持ち出されたという物を持っていました。胸のポケットから取り出された一枚の写真―。
【記者】VTR
「この写真はどういう写真ですか?」
【脱北者・男性】
「この人は日本人拉致被害者です。この人は平壌市ヨンソン区域マラムにある北朝鮮スパイ訓練所の日本語教官です。名前はわかりませんが、日本人であることは確実です。」
【ナレーター】
写真の男性は日本人拉致被害者。しかも平壌にあるスパイ研究所で日本語を教えているのだと言います。一体どういう人物なのでしょうか?
【脱北者・男性】VTR
「聞いた話によれば、この人は朝鮮労働党の党員証も持っている人物で教官としても地位が高い人だということです。北朝鮮のスパイ教育をするところは“中央党研究院”と呼びます。だからこの人は中央党研究員の教授ですね。日本語、それから日本の常識、礼節、あいさつの方法、こういうことを教育していたようです。」
【記者】
「歴史や政治も?」
【脱北者・男性】
「ええ、それもです。」
【ナレーター】
写真は1980年代に撮られたもので、写真の男性は現在50代。脱北者は写真を別の脱北者から受け取っており、情報もその人物からのものだと言います。
【脱北者・男性】VTR
「写真は中国で受け取りました。2003年の11月末か12月初めだったと思います。彼は金正日に非常に近い人物ですから、しかるべきところに行って写真を持って来ることもできます。この写真は幹部が書類整理している時に極秘のうちに持ち出したと聞いています。」
【ナレーター】
金正日総書記に近い人物によって持ち出された写真。この脱北者の言うことが事実なら「日本人拉致被害者の写真が流出した」という前代未聞の出来事です。
私たちは帰国後、この人物を訪ねました。特定失踪者問題調査会の荒木和博代表。拉致された可能性が否定できない特定失踪者の情報を集め続けています。私たちは何も情報を伝えず、荒木氏にこの写真を見てもらいました。写真を見て、考えこむ荒木氏。
【特定失踪者問題調査会・荒木和博代表】
「見た顔のような気がするんだけど、ちょっと・・・。髪の毛は完全に北朝鮮の方ですね。」
【ナレーター】
私たちは写真を入手した経緯を説明しました。荒木氏はパソコンを開き、脱北者の情報をもとに特定失踪者のデータを検索しました。しかし・・・。
【特定失踪者問題調査会・荒木和博代表】
「だいたい同じくらいの年齢で男で60人くらいいますね。(写真を見て)左目が少し高くなっていますね、ちょっとね。写真が曲がっているわけじゃ、ないんですよね。特徴がある・・・。」
【ナレーター】
男性は左目が右目に比べて少し上の位置にあります。左の耳も右の耳に比べて上の位置にあります。確かに特徴がある顔です。私たちは脱北者のインタビューを荒木氏に見てもらいました。思い当たる人物はいないと言いますが・・・。
【特定失踪者問題調査会・荒木和博代表】
「まぁ、ともかく何か一つでも端緒が開ければなということに尽きますけどね。やはり顔に色々、パーツや何かに特徴のある人ですから、特定するのは家族が名乗り出てくれている方であればそれほど難しくないのではないか。これが北朝鮮から持ち出されたことが間違いないのであれば、それに該当する人物がいればもうこれは拉致だと思っていいでしょうから。」
【ナレーター】
私たちは特定するのは時間がかかると考え始めていました。荒木氏も何気なくポスターと写真を見比べていました。その時です。荒木氏の手がある写真の前で止まります。
【特定失踪者問題調査会・荒木和博代表】
「ちょっと、目の感じが似ているような気がしますね。」
*写真は'04 8/22の朝霞市での講演会後に藤田隆司さん所有の写真を撮影させていただいたものです。
【ナレーター】
藤田進さん、28年前に姿を消した大学生です。(調査会のポスターの)写真を大きくして比べてみると―。
【特定失踪者問題調査会・荒木和博代表】
「目の感じが似ている・・・。」
【ナレーター】
荒木氏は写真をコピーし始めました。2枚の写真を同じ大きさにして比べてみようというのです。その結果・・・。
【特定失踪者問題調査会・荒木和博代表】
「生え際は違うけども、ほとんどぴったりに近いな。これはひょっとしたらひょっとするかもしれない。これはやっぱり本人じゃないかなぁ・・・。」
【ナレーター】
重ね合わされた2枚の写真。鼻や口がぴたりと合います。左右で特徴のある目や耳の位置も重なりました。
【特定失踪者問題調査会・荒木和博代表】
「藤田さんは東京学芸大学の学生です。『アルバイトに行く』と言って家を出たままいなくなったんですね。いなくなったのは昭和51年の2月、当時19歳。」
【ナレーター】
埼玉県川口市出身の藤田進さん。私たちは彼の家族に会うことにしました。参議院選挙の真っ最中(7/6東京・池袋の街宣)、藤田進さんの弟・隆司さんは、増元照明候補の演説会場にやって来ました。私たちは隆司さんに「重要な話がある」とだけ伝え、荒木氏の事務所へ向かいました。(車に乗り込む藤田さんと荒木さん)
【記者】
「あの、お兄さんがいなくなってから連絡は?」
【特定失踪者 藤田進さんの弟・隆司さん】
「全然、丸っきり。大学1年のちょうど終わりかけた頃ですね、2月7日ですから。『新宿方面にアルバイトに行く』と言ったんですね。その時に親父が、親父と兄貴と俺の3人の生活だったのね、『洗濯物出しとけよ』って親父が兄貴に出て行く時に言ったんですね。そしたら『じゃあ明日休みだから自分でするからいいよ』って言ってそのまま普通に出て行ったんですね。それからパッタリです。」
【記者】(調査会事務所にて)
「ちょっとまず何も言わず何も聞かずにこれをご覧になっていただきたいと思います。」
【ナレーター】
私たちは荒木氏に写真を見てもらった時と同じように、何の情報も伝えずに写真を取り出しました。(隆司さんに写真を渡す)
【特定失踪者 藤田進さんの弟・隆司さん】
「うーん、違いますね。」
【ナレーター】
「自分の兄ではない」と言いますが・・・。
【特定失踪者 藤田進さんの弟・隆司さん】
「(考え込みながら)うーん・・・、28年前のね、顔しか思い浮かばないんでね・・・。うーん・・・。いやぁ、ちょっとわからないなぁ・・・。」
【ナレーター】
私たちは拡大した写真を取り出し、脱北者から写真を受け取った経緯を説明しました。そして―。
【特定失踪者 藤田進さんの弟・隆司さん】
「(2枚の写真を重ね合わせて見て)あっ、本当ですねぇ。うーん、これだけ位置関係が一致するっていうのもねぇ。うーん・・・。」
【ナレーター】
考え込む隆司さん。(しばらく荒木さんとやりとり)
【特定失踪者 藤田進さんの弟・隆司さん】
「今ねぇ、ふっと見せられちゃうとあまりにも・・・。別人、いやぁ・・・。私もね、この写真の(調査会ポスター)当時しか覚えていないんですよ。うーん、いやぁもしかしてそうなのかなぁというふうに思うようになりましたね。ぜひとも科学的な調査の結果を待ちたいと思います。よろしくお願いします。」
【ナレーター】
写真の男性は藤田進さんなのか?弟の隆司さんはより詳しい鑑定を希望。私たちは写真を専門家の所に持って行きました。東京歯科大学の橋本正次助教授。日朝首脳会談にも同行し、政府の調査団にも参加した法人類学の第一人者です。私たちはこれまでの経緯を説明し、それぞれの写真を橋本助教授に見てもらいました。2つの写真を見比べる橋本助教授。
【東京歯科大学・橋本正次助教授】
「これは手が止まるでしょうね。僕ね、自分の眉で小さい頃からね、眉ってどっちかがすりへっているでしょう。要するに毛のない所がどっかにあるはずなんですよ。いくらこうやったって(自分の眉をさすって)それが必ずそこに筋が入るぐらいの毛がないんですよ。(写真を見比べて見て)この人さぁ、こっちに毛がないじゃないですか。同じところに毛がないんですよね。自分で気にしているから、この人も同じようにそういう所の特徴があるしね。」
【ナレーター】
橋本助教授が注目したのは左の眉。問題の写真には毛がない箇所があり、藤田進さんの写真にも同じ特徴があります。さらに―。
【東京歯科大学・橋本正次助教授】
「骨は一緒ですよね。中に入っている骨は一緒なんですよ。何を言っているのかと言うと、例えばここに眉がありますよね。この眉っていうのは普通“眼窩上隆起”って言って、眼窩(頭がい骨の眼のくぼみ)の上の盛り上がったところに乗るんです。ところがこの人の眉は(眼のくぼみの)中に入って、その上にふくらみがあるんですよ。」(写真で説明する)
【ナレーター】
問題の写真は目の上にふくらみがありその下に眉毛が生えていますが、藤田進さんの写真にも同じ特徴があります。橋本助教授は2枚の写真に線を引き顔の部分ごとの位置を確認しましたが、これもほぼ一致。さらに目や口も拡大。橋本助教授は正式な鑑定をする前のこの段階でもこう言い切りました。
【東京歯科大学・橋本正次助教授】
「画像から見てこの両者を別人とする材料は何もない。形質的には何ら矛盾するものはないし、非常に表現的に言えば酷似している。もうちょっとキチンとして調べてみよう、これは。キチンとしてからの方がいいかもしれない。事が事だけにね・・・。」
【ナレーター】
この後、家族の要請で正式な鑑定が行われることになりました。
【特定失踪者 藤田進さんの弟・隆司さん】(調査会事務所にて)
「これが一番いなくなる直前の写真です。この大学時代のラグビーの写真です。」
【ナレーター】
大学一年生の時に姿を消した藤田進さん。小学校時代は水泳の全国大会で入賞。中学校時代はバレーボール部のキャプテンで生徒会長。大学時代はラグビーに打ちこみ、大学卒業後は体育教師になるつもりでした。
【特定失踪者 藤田進さんの弟・隆司さん】
「何で?何でなの?っていう、何で出て行っちゃったの?と。あるいは自分で出て行く理由がもう分かんないんですよ。どう考えても今でも分かんないんですよね。学生時代のノートとかいっぱい残っているんです。今でもあるんですけどね、いっぱい残っているんです。アルバムももちろんそうだし色々な写真もそうだし、そのままですよね、とにかく。あんなにやりたかった体育の先生にもうちょっと頑張ればなれたのに、理由がねぇ・・・。生き生きしていたと。」
【ナレーター】
大事なものをすべて残したまま失踪した兄。28年間何の手がかりもありませんでしたが、この写真が藤田進さんなら極めて有力な手がかりになります。
【特定失踪者 藤田進さんの弟・隆司さん】
「私自身がもう自分自身でフタをしてしまった部分があるんです。もうとにかく(兄のことは)なかったことにしちゃおうと。本来ならもっと自分が動けば、もっともっと早くこう色々動いたんじゃないかなという思いを込めて、ぜひとも今(兄が)生きていることを信じて、これからもこの問題に対して積極的に進んで取り組んでいこうと思っています。うちの親父が生きているうちに帰って来てほしいと思いますね。」
【ナレーター】
7月28日、藤田進さんの弟・隆司さんは特定失踪者問題調査会の代表と共に、鑑定の経過を聞きにやって来ました。
【特定失踪者 藤田進さんの弟・隆司さん】
「もし兄だということがほぼ分かれば、これはますます私が思っていた単なる直感が直感じゃないなと・・・。」
【記者】
「直感というのは“拉致”だという直感ですか?」
【特定失踪者 藤田進さんの弟・隆司さん】
「そうです、拉致だという直感です。まさかそんなことは思いもしなかったんですが、ここ2年ほどの動きによって、もしかしたらというふうな思いが最初は低かったんですけども、徐々に調べれば調べるほどますますその可能性は高いと。」
【ナレーター】
2人は橋本助教授のいる東京歯科大学に向かいます。写真に関する話は2時間以上続きました。一体どんな説明があったのでしょうか?
【記者】
「橋本助教授の説明をどう思ったか?」
【特定失踪者 藤田進さんの弟・隆司さん】
「そうですね、説明と同時に本当に具体的に写真を見せていただいて、写真を2つ並べて本当に事細かに具体的に説明を受けました。まゆ毛に特徴があって、そこにこう少しケガの痕があったんですが、それは最初気がつかなかったんですけど指摘されて、それまでが一致していたと。一致していないところがないというぐらい一致していたので『ほぼ間違いないだろう』ということだと思います。」
【記者】
「目もまゆも?」
【特定失踪者 藤田進さんの弟・隆司さん】
「そうです。鼻と口も、最後には耳まで。あと、ほくろの位置関係も。これはもう本人以外ありえないだろうというふうに私は思います。」
【ナレーター】
橋本助教授による正式な鑑定書は近く出されます。藤田進さんが拉致被害者として認定されるよう、弟の隆司さんは政府に求めていくつもりです。そしてその藤田進さんは今も北朝鮮で生きている可能性があります。写真を私たちに提供した脱北者はこう話していました。
【記者】VTR
「今も訓練所で仕事をしていると思いますか?」
【脱北者・男性】
「はい。北朝鮮の訓練所の教官として仕事をしていれば、高級な生活はできないにしても生きていくのはたやすいでしょう。この人は今もいると聞いています。」
【ナレーター】
そして藤田進さんの弟・隆司さんは、私たちにこう言いました。
【特定失踪者 藤田進さんの弟・隆司さん】
「ぜひともこういった情報というのは初めてですし、拉致問題というのは10件15人じゃなくてまだまだ本当に『氷山の一角である』ということを知っていただくためにも、ぜひとも放送していただきたいと思います。」
【記者】
「進さんの身に危害が加えられる可能性もないわけではないと思うのですが?」
【特定失踪者 藤田進さんの弟・隆司さん】
「それも当然考えられなくはないんですが、あの、何とも言い切れませんが、予測でとにかく分からないんですけれども、公にすることで逆に身の安全が図れるのではないかと私は思っているんです。世論の力をお借りして、何とか一歩でも二歩でも前進させてほしいと思っています。」
【ナレーター】
28年前、19歳で失踪した藤田進さん。今も北朝鮮の地で生きているのなら何を思うのでしょうか?
【司会者・田丸美寿々さん】(スタジオにて)
「橋本助教授による正式な鑑定書は近く出る見通しなんですが、すでに藤田さんの家族には『同一人物である可能性が極めて高い』という結果が伝えられています。そして藤田さんの家族と特定失踪者問題調査会の荒木代表は、明日にも(8/2)政府に対しまして藤田進さんが拉致被害者として認定されるよう要請する考えです。
ご存知のように、政府は拉致被害者としては10件15人以外には認定をしていないんですが、『今回のこの写真がもしかしたら10件15人の壁を突き崩すことになるかもしれない』と荒木代表は話しています。
ちなみに藤田さんが失踪した1970年代というのは、(映像 久米裕さん・横田めぐみさん・田口八重子さん・増元るみ子さん・市川修一さん)ご覧の方たちが拉致された時期、地村さんや蓮池さんたちも同じ時期です。もし同一人物ということになれば、藤田進さんの28年間の長い空白、埋まることになります。」
終わり
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