
*写真は講演会に参加したあおいのパパの撮影です。
*講演要旨をレポートにしました。聞き取りに間違いのある可能性もございます。どうぞご了承ください。
【北朝鮮難民救援基金国際担当・野口孝行さん】
本日はお招きいただきまして、どうもありがとうございます。私たちの団体は脱北者を支援している団体という事で、日本と韓国にも私たちみたいに支援してくださる方はたくさんいます。
*北朝鮮難民救援基金
http://www.asahi-net.or.jp/%7Efe6h-ktu/toppage.htm
それで私自身3年前の12月、北朝鮮から逃げて来た帰国者の人たちを助けるという作戦をしている間に中国で捕まって、8ヶ月拘束されたのですが、韓国でもちろんそういう方たちがいます。実際そういう方たちが中国に捕まった時にどういう仕打ちを受けるのか、そしてまた韓国という国はどういうふうに対応をとるのか、というのをですね、ちょっと私の場合と完全に同じ条件ではないので多少状況はかわってくるのですが、違いみたいなものをちょっとお話したいと思っております。
皆さん記憶にある方もいらっしゃるかと思いますが、今から4年前、2003年の1月に“煙台ボートピープル事件”(中国山東省煙台港にて)がありました。その時は漁船を2隻使って、日本と韓国に1隻ずつ、脱北者を中国から脱出させるという作戦がありまして、1月18日に決行させ、船が出て行くという計画だったんですが、その未明に一網打尽にされてしまって、約80名くらいの脱北者の人たちが拘束され、その計画に関わっていた現地の主に朝鮮族の人たちと、首謀者とされた韓国人が拘束されるという事件がありました。
それでこの首謀者の方が崔永勲(チェ・ヨンフン)さんなのですが、裁判を経て5年という刑を言い渡されました。その後3年11ヶ月の服役を経まして、去年の11月に中国から韓国に帰ったという、そういう流れがありました。
私は実は、彼が拘束される2週間前に中国の煙台で会っていまして、それで「こういう計画がある」という事を聞かされていまして、「日本に1隻のボートが行くから」と「もしか行って、日本の領海に入った時は日本の海上保安庁等々に連絡をして受け入れをお願いします」というような事を知らせ、それで実際に煙台の事があったわけですが、捕まったと。
今回韓国に帰って来た時も、私は彼に会いに行ったんです。今年の1月、2〜3週間くらい前です。それで、色々話を聞いていくうちに、これはもう私のケースとはすごい桁違いだという事で、すごく驚きました。
まず彼が捕まって、もちろん韓国の領事が来るわけですね、彼に会いに。監置所に来た時にその領事の方が言うには「あなたは中国の法律を破ってしまったんだから(逮捕は)しょうがない」と。「これから裁判に行ってどういう結果が出るかわからないが、ここでずっと仕事もしないで寝起きできるんだからゆっくり休みなさい。」「私も変われるものなら変わりたい。私も忙しくて、休めるものなら休みたい。」と、そんなような言い方をしたらしいですね。
かたや私が捕まった時にもすぐ(日本の)領事館から来まして、その時は「野口さん、心配しないでいいから」と「日本の政府も一生懸命中国の政府とかけあって、なるべく早く釈放されるようにこちらも動くから。大変だと思いますけど、何か欲しいものがあったら、何か不都合があったら今言ってください」と、まぁこういう感じでした。
それでそれから3年11ヶ月の間、彼は拘束されるのですが、出所になる2ヶ月くらい前から約1ヶ月の間、囚人たちが6〜8人がよってたかって殴る蹴るの拷問を加えた、というんですね。それだけではなく、彼はキリスト教徒だったので「ちょっとお祈りをする部屋を欲しい」と言ったらそれが認められて、小さな部屋をあてがわれたらしいのですが、そこでお祈りをしていると背後から囚人たちが何人か来て羽交い絞めにし殴る蹴るをすると。
場合によっては、ある時注射を持った医務官みたいなのも一緒に来て、「注射を何回かされた」事もあったようです。それでその注射をすると、とにかくもう意識が朦朧として、記憶がなくなる感じがあったそうですね。実際それが何だったのかわからないんですけど、彼が言うには「韓国に帰って来て頭の調子もおかしくなった」と。
そういう暴行があった2ヵ月後に釈放されたという事を考えると、もしかしたら中国の政府がもう帰国が決まっている彼に対して、もうこいつ廃人にしちゃおう、廃人にすれば実際にどういう事があったのかとか、どんなひどい事がその現場で起こったのかとか、そういう事をもしかしたら口封じしちゃおうと、そういうような可能性も深読みすればあったのかな、と思いました。
私の場合は刑務所ではなくて未決囚が収容されている監視所だったので、もちろん拷問みたいなものもありませんでしたし、そういった注射をされるという事もありませんでした。
その後彼は、去年の11月に帰って来るんですが、最初に私のケースを言えば、成田空港に着いた時には取材の方たちが来て、記者会見をしてそのまま帰って来ました。その後は外務省の邦人保護課の方に呼ばれて、その時の状況、「拷問されましたか」とか「体は大丈夫ですか」とかそういった色んな事を聞かれるわけです。
かたや崔(チェ)さんの場合、彼は空港に降り立って、税関というか出口を出るゲートというか、搭乗口の迎えの人たちがいる所に出る前に韓国の警察が待っていまして、いきなり3年11ヶ月もそれこそ脱北者を助けるために一生懸命やっていた人にもかかわらず、「あなたには詐欺の罪がある、詐欺の容疑がある」と「現行犯で逮捕する」と言って、手錠をかけられ連れて行かれそうになった、という事なんです。
それはどういう事かというと、彼は脱北者を助けるために中国で事業をしていて、それは建設機器の部品の商社みたいなんですが、どうやらいくらかお金を借りていたらしいのです、事業のために。それでそれが確か200万円ぐらいだったと思うのですが、もちろんそれは返すはずだったのですけど、3年11ヶ月の間、返せるわけがないですよね、捕まってしまったんですから。「あなたは返すはずだったお金をこの間返していないから、これは詐欺だ」と言われ、逮捕されそうになったと。逮捕状をよく見ると、罪状なんかも身に覚えのない事が含まれていたり、生年月日はいいかげんだったらしいのです。
中国は拷問にかけて彼を破壊しようとし、自分の国である韓国に帰って来たら、あたかも空港を出て何か記者に向けて発言するのを阻止するような口封じするような感じで、降り立った瞬間に手錠をかけてそのまま留置しようとする。そういう本当に耳を疑ってしまうような事件が実際去年の11月に起こっていた、という事ですね。
彼は結局その後、せっかく帰って来て家族に対面する前に手錠をかけられたというストレスだと思うのですが、ちょっと頭がその時おかしくなったような状況で、たまたま出迎えの空港に国会議員の方がいて、「私が彼の身柄をちゃんと保証するから、今日は帰してあげなさい。私が国会議員として保証するから。」という事で帰る事ができたのですが。
手錠を外されて家に帰っても、やはりPTSD(心的外傷後ストレス障害)というかすごく情緒が不安定になってしまいました。もちろん家族に会えるのはうれしいんですけど、夜にパッと起きて奥さんの顔を見ると、自分をリンチした囚人に見えたり、時によっては奥さん・子どもが看守の人たちに見え、最初の1ヶ月くらいは家族に暴力を振るうという事があったらしいです。
それで実際に病院に行くと「統合失調症ではないか」という診断を下されまして、家族も支援してきた人たちも「これは大変だなぁ・・・」という事になったんですが。落ち着いて何件かの精神科医を訪ねて行ったところ、「急激なストレスが加えられたことによる一時的な錯乱状態だった」という事で、統合失調症というのは誤診だったらしいですね。それで今徐々にそういった状況から脱して精神的にも安定してきている、という状況らしいです。
ただ、本当に韓国と日本の間でも、人道支援家という人の目を通して見ても、これだけ大きな差があるという事です。もちろん彼がやった事は僕がやった事よりも規模は大きいのですが、それでもこれだけの大きな差があって、逆に言えば彼がやった事というのは「自分の民族を助ける」という、本当に韓国の人たちが常々言っている事をやったにもかかわらず、そういったとんでもない仕打ちを受けるという事を、今回本当にまざまざと見た思いでした。
*脱北者支援したチェ・ヨンフンさん「中国で服役、暴行される」
http://www.wowkorea.jp/news/Korea/2006/1130/10017338.html
韓国の人たちは「太陽政策だ」とか「私たちの民族だ」とか色々言うのですが、それは今に始まった事ではなく、実際に私もまだ東南アジアとかで動いていた時に、脱北者の人を、あれはカンボジアのプノンペンでしたが、子ども6人を韓国の大使館に「保護してください」と連れて行った時にすごく嫌な顔をされまして、「今回今日は彼らを受け取りますが、次にまたそういう事をしたら、私たちはあなたたちをこの建物の中に入れる事はできないですよ」と韓国人の参事官が言ったりするのです。本当に不思議な国だなぁとその時思ったんですが・・・。
この後、萩原(遼)先生からもおそらくまた詳しいお話があるかと思いますが、私は1月に韓国に行って、「今年の大統領選はどうなるでしょうか?」と何人かに聞きましたら、ウリ党、野党でハンナラ党がありますけども、「ハンナラ党が仮に政権をとってもあまり状況は変わらないでしょう」という意見が大半でした。もちろん今の盧武鉉(ノムヒョン)政権を批判するために、ハンナラ党としては「今の太陽政策が間違っている」とか、そういった発言をする人たちも多いのですが、基本的には無関心だというのですね。「自国の拉致問題に関しても無関心だし、脱北者の問題にしても無関心」だと。「選挙に勝つための材料としてウリ党、今の政策を批判する事はあるけれど、結局どっちが勝とうとも基本は無関心だし、あまり大きな変化を期待しちゃいけないよ」と言われました。
そうなるとやっぱり脱北者、人道人権の問題にしろ拉致の問題にしろ、韓国に頼る事は本当に無駄だと、頼れないのかなという思いを本当に強くしました。
最後に、実は今お話した話がおそらく2月25日もしくは次の週だと思うのですが、この崔永勲(チェ・ヨンフン)さんという方の韓国の人道活動家の方の話とか、韓国の今の状況を含めた事が、たぶんTBS「報道特集」で放送されると思いますので、よろしければ韓国の状況をご覧になっていただけたらと思います。どうもありがとうございました。(大拍手)
*3/4 TBS「報道特集」空前の亡命計画の行方
http://aoinomama13.seesaa.net/article/35493545.html
終わり
*写真は'06 12/10「映像とシンポで語る北朝鮮」(彩の国 さいたま芸術劇場)の第2セッションでお話をされた韓国の人道活動家・文国韓(ムン・クッカン)さんです。崔永勲(チェ・ヨンフン)さんから「力を貸してくださった日本の皆さんへ」と絵をたくさん描いて預けられたそうです。メディアの方と難民救援基金の加藤博さんに贈られました。(あおいのママ撮影)
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