真冬の北朝鮮で働く労働者たち。カメラが潜入したのは炭鉱地帯。「ここはまだ出てきてないな・・」とうもろこし畑にできた無数の穴。死と隣り合わせで働く人々。エネルギー不足の北朝鮮で今何が起きているのか?「何か用か!」
*2/11 TBS「報道特集」(1)六ヵ国協議 拉致問題は
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続き
北に潜入! 路上の撮影者
【ナレーター】
路上に現れた人影。緑色の軍用トラックの方へ歩いて行きます。私たちはこの人物が今年の冬、北朝鮮咸鏡北道(ハムギョンホクドウ)の町で撮影した映像を入手しました。
道の端の方でもみ合っている男女がいました。ケンカをしているようです。撮影者は近づいて行きます。
【男性】
「出て来いっ、こいつめ!」
【女性】
「そんな事しないで、おじさん!」
【男性】
「殺してやるっ!」
【女性】
「もう、そんな事しないでよ!」
【ナレーター】
カメラがとらえた北朝鮮の人々の生活。その中には、北朝鮮のエネルギー事情がうかがえるこんな映像もありました。白いシートの脇にある黒い物質。売られているようです。何なのでしょうか?
【撮影者】
「これはどこから持ってきた物?」
【女性】
「センギリョンの石炭」
【撮影者】
「センギリョンの石炭・・・?」
【女性】
「石炭の粉も売ってます。たくさん必要なの?」
北に潜入! 路上の石炭売り
【ナレーター】
かつては“黒いダイヤ”と呼ばれた石炭。北朝鮮では今も重要なエネルギー源です。その石炭が何人もの女性たちによって路上で売られているのです。
【撮影者】
「これいくら?」
【女性】
「600ウォンだけどまけるよ!」
【ナレーター】
この石炭売りの光景を実際に見ていた人物がいます。
【脱北者・朴淑子(パク・スッチャ)氏】
「これは市場じゃなくて、空き地で売っているみたい。市場の中には石炭を売る人は入れません。外で立って売らないといけないんです。」
【ナレーター】
近くの町に住み、1年ほど前に脱北した朴淑子(パク・スッチャ)氏。こう話します。
【脱北者・朴淑子(パク・スッチャ)氏】
「この人たちは生活が苦しい人たち。市場で売り場を確保できないので、石炭を掘って外で売り、その日暮らしをしています。子どもたちを勉強させて靴を買い、食料を買わなくてはなりません。全部自分の力でやらないといけないのです。」
【ナレーター】
賑わいを見せる北朝鮮の市場。市場から少し離れた場所でも石炭は売られていました。しかし貧しいはずの人々が、北朝鮮の重要なエネルギー源である石炭をどこからどうやって調達してくるのでしょうか?それを示す映像がありました。
北朝鮮潜入! 畑にナゾの穴
【ナレーター】
撮影者が自転車で走っていると、奇妙な光景が見えました。柱が三角形に組み立てられ、10人くらいの男たちの姿があります。
【撮影者】
「ご苦労さん、今何をしているんですか?ああ、ここを掘って石炭があるかどうかを見ているのか。」
【ナレーター】
自分たちの手で石炭を掘り出そうとしていますが、まだ出てきていないようです。
【撮影者】
「出てきましたか?何メートル掘りましたか?」
【ナレーター】
撮影者は再び石炭採掘の穴を見つけます。しかし―。
【撮影者】
「ここはまだ出てきてないなぁ・・・。
【ナレーター】
さらに歩いて行くと―。
【撮影者】
「まだ石炭は出てないですか?これは何メートル掘ったんですか?」
【男性】
「18メートル」
【ナレーター】
18メートルの深さの穴。そこにバケツを下ろしていきます。しばらくしてロープでそのバケツを巻き上げると・・・、そこには“黒いダイヤ”石炭が入っていました。穴の横には掘り出した石炭が山積みされていました。石炭が掘り出されている場所はとうもろこし畑。高い所から見下ろすと、いくつもの穴が掘られていることがわかります。また、周囲には大きな三角形の山が点在しています。これは石炭を掘った土などでできた“ぼた山”です。
地下資源の宝庫ともいわれる北朝鮮。その中でも石炭は量・質ともに豊富だとされています。咸鏡北道(ハムギョンホクドウ)には数多くの炭鉱がありますが、その近くではこうしたかたちでの石炭掘りがよく見られるのだといいます。
別の穴に近づいた撮影者。穴の入口に腰掛ける男性。中の様子をうかがい、しばらくすると下に下りて行きました。
【脱北者・金美麗(キム・ミリョン)氏】
「今、乗るじゃない。ああやってつかみながら下りて行くんです。」
【ナレーター】
映像を見ながらつぶやいているのは金美麗(キム・ミリョン)氏。1年ほど前までこの地域で暮らしていた脱北者です。彼女は石炭ではなく砂金を採っていましたが、「採掘の仕方はまったく同じだった」といいます。
【脱北者・金美麗(キム・ミリョン)氏】
「(絵を描いて説明)このバケツに人が乗って、紐を握って、バケツは揺れるので紐を握っていないと落ちて死にます。穴の底に降りてツルハシで。道具はみんなここに置いてあるから。初めはこんなふうに・・・、徐々にツルハシで掘っていきます。だから広がっていくんです。」
【ナレーター】
「複数の人間が交代で石炭を掘っているのだ」という金美麗(キム・ミリョン)氏。穴の中の様子を教えてくれました。とうもろこし畑に広がる石炭採掘の穴。石炭を掘る人はバケツに乗り、ロープにつかまって穴の底へ下りて行きます。そこでツルハシとスコップを使って石炭を掘り出していくのです。
【脱北者・金美麗(キム・ミリョン)氏】
「これは企業としてやってるんじゃなくて、個人で食べていくためにチームとしてやっています。違法な行為です。とうもろこし畑をこんなふうにしたら罰金をとられます。捕まったら違法だから・・・。どうしても食べていかなきゃならないので、苦労して土も掘るんです。石炭をこんなふうにツルハシで。」
北朝鮮 命がけの石炭採掘
【ナレーター】
しかし、採掘には様々な危険があります。穴の傍らに人だかりができていました。撮影者は近づいて行きます。そこにいたのは大の字になって倒れている男性でした。作業事故が起きたのです。男性は脇に移動させられジャンパーをかけられました。
【男性の仲間】
「垂直に落ちたんじゃないかなぁ・・・。」
【撮影者】
「すごく高さがあるから、落ちたら痛いだろうさぁ。」
【ナレーター】
撮影者が偶然にとらえた事故直後の映像。
【脱北者・金美麗(キム・ミリョン)氏】
「『勢いがついて落ちるからやめろ』と言ったのに、落ちてしまったんです。」
【ナレーター】
石炭を掘るため、ロープとバケツでゆっくりと下りようとしていた男性。しかし、下りるスピードがつきすぎてバランスを崩し、穴の底に落下してしまいました。仲間の女性から顔についた血をふき取られる男性。命に別状はないようです。しかし、石炭掘りの穴をめぐる事故は多発しているといいます。例えば―。
【脱北者・金美麗(キム・ミリョン)氏】
「ある人は夜に穴を掘ろうとして、他の人が掘った穴に気づかず、そこに落ちて死にました。」
【ナレーター】
また、石炭を掘っていて穴が横に広がり、弱くなった土砂が崩落。こうした落盤事故によって亡くなる人も多いといいます。
命がけで得た石炭は牛車に積まれて運ばれ、売りさばかれます。危険と隣り合わせの石炭堀、いつ頃から始まったものなのでしょうか?
【脱北者・河日(ハ・イル)氏】
「“苦難の行軍”と呼ばれた時の94年〜98年の間、一部の炭鉱の労働者が外に出て、炭鉱の周辺の土地を掘り始めたんです。こっそり、こっそりと・・・。」
【ナレーター】
こう話すのは取り締まる側、北朝鮮で警察の仕事をしていた脱北者・河日(ハ・イル)氏です。その当時、1990年代中盤に始まった食糧難。飢餓で死んでいく労働者や家族のため、「緊急措置がとられた」といいます。
【脱北者・河日(ハ・イル)氏】
「炭鉱の党委員会が決めたのは、『石炭をリュック1つ分ずつ持って帰れ』と。これが配給で月給です。家に帰ると家族は本当に喜びました。子どもと奥さんは石炭50キロを次の日市場に持って行って、とうもろこし1.5キロと交換します。そういうふうに生きてきました。」
【ナレーター】
恒常的な電力不足によって、多くの設備が稼動せず生産力が低下しました。そして労働者も出勤しなくなりました。その結果、違法と知りながらも「炭鉱の周辺の土地を掘り始める人が出てきた」といいます。
【脱北者・河日(ハ・イル)氏】
「穴が1,000個あったら、警察の人間が30〜40人しかいないのにどうやって取り締まるんですか?だからどうしたかというと『掘れ、掘っても30%は警察に出せ』と・・・。」
【ナレーター】
掘り出した石炭のうち30%は警察に、20%は炭鉱の職場に供出、10%は牛車での運搬費となり、残り40%が個人の手に。しかし「そうやって稼いでも一向に生活は楽にはならないのだ」と河日(ハ・イル)氏は言います。
潜入映像 北朝鮮の炭鉱
【ナレーター】
雪に覆われた線路沿いを歩く撮影者。向った先にはトンネルが。入口に書かれているのは“電車坑”(でんしゃこう)“3大革命赤旗争奪戦闘場”(3大→思想・技術・文化)という文字。こうした場所に掲げられるスローガンです。
トンネルの中から労働者が出て来たその直後、闇の中で点滅する青い光。列車が現れました。ここは咸鏡北道(ハムギョンホクドウ)にある炭鉱。「日本の植民地時代からある」といいます。貨車に積まれていたのは、採掘されたばかりの石炭です。列車を見届けた後、撮影者は坑道の入口から離れます。そして、ある建物の中に潜入しました。そこは―。
【炭鉱労働者】
「何か用か?」
【ナレーター】
そこは脱衣所でした。これから坑内に行く労働者が作業着に着替えています。汗ビッショリになるので、パンツまで替えます。炭鉱の奥深くで石炭を掘る労働者は職場が暑いので薄着ですが、炭鉱を出入りする労働者は綿の入った服を着ているといいます。
別の部屋を訪れた撮影者。そこには薄い布団がありました。
【脱北者・金美麗(キム・ミリョン)氏】
「こんなもの、どこで撮って来るの?あきれるわねぇ。こんなのは『反動工作』って言われるわ。何か見ているだけでも震えがくるわ・・・。」
【ナレーター】
緊張しながら話すのは、この地域に住んでいた脱北者・金美麗(キム・ミリョン)氏です。
【脱北者・金美麗(キム・ミリョン)氏】
「炭鉱にいるのは結婚していない除隊軍人たち。金正日の方針によって集団で働きに来ているのです。まだ結婚していないので寄宿舎で生活します。」
【ナレーター】
再び外へ出た撮影者。今度は青い扉の部屋に入ります。壁に絵が描かれたその部屋は食堂でした。労働者が食べているのは“とうもろこしで作った麺”でした。次々とやって来る労働者で食堂はいっぱいになります。きつい労働に耐えるためでしょうか、とうもろこし麺は量が多いようにも見えます。しかし「かつて炭鉱にもいたことがある」という脱北者・朴淑子(パク・スッチャ)氏はこう話します。
【脱北者・朴淑子(パク・スッチャ)氏】
「これは食堂ね。昔しっかり運営されていた頃、炭鉱の労働者たちはパイロットと同じ待遇だったんです。肉類・菓子類・油、すべて保障されていたのに、だんだん落ちていって、今でも何とか運営されているけど1日1食です。とうもろこし麺ですからね、1食なのに・・・。」
【ナレーター】
朴淑子(パク・スッチャ)氏によると、炭鉱は実質8時間労働。彼らは午後3時に坑道に入り深夜まで作業し、交代するのだといいます。
【脱北者・朴淑子(パク・スッチャ)氏】
「坑道に入る前に昼食をとるのです。とうもろこしご飯にして食べる場合には、体への吸収は30%しかされません。でもとうもろこしを麺にして食べると消化吸収がいいから、ほとんどそうやって食べているんです。」
【ナレーター】
食堂を出た撮影者。そのカメラがとらえたのは5人の労働者たち。充電の完了したバッテリーとライトをここで受け取るのです。腰に付けて坑道に入っていきますが、その重さは体に堪えるといいます。
ここは坑道を支えたりするための木材を作る部屋。さらに溶接などで修理を行う部屋もカメラはとらえていました。
仕事を終えて炭鉱を出ようとする一人の労働者。その肩には・・・。
【脱北者・金美麗(キム・ミリョン)氏】
「この人のリュック、リュックが・・・」
【ナレーター】
この地域にいた脱北者・金美麗(キム・ミリョン)氏はリュックを指し示しました。
【脱北者・金美麗(キム・ミリョン)氏】
「リュックサックに石炭を入れて家に持って行く、それが目的です。国家の石炭なのに盗んでいくんです。このリュック一つ売ると1家族4〜5人が1食は食べられます。1日は生きられます。」
【ナレーター】
何気ない映像の裏には、未だ苦しい炭鉱労働者の生活がありました。
大変化! 北朝鮮の民衆
【ナレーター】
今年初めから、電気・石炭問題の決定的な解決を訴えてきた北朝鮮。しかし炭鉱の労働者の待遇はかつてより悪くなり、とうもろこし畑での危険な石炭掘りが行われ続けています。この背景には何があるのでしょうか?

*写真は'06 12/10「映像とシンポで語る北朝鮮」(彩の国 さいたま芸術劇場)の第2セッションで司会をされた石丸次郎さんです。(あおいのママ撮影)
【アジアプレス・石丸次郎氏】
「北朝鮮は今、外側からはなかなか見えにくいんですけども、北朝鮮の国内は今大変化を起こしているんですね。」
【ナレーター】
こう話すのは、1990年代前半から北朝鮮取材を続けるアジアプレスの石丸次郎氏。大変化とは何なのでしょうか?
【アジアプレス・石丸次郎氏】
「これまで統制経済システムをとってきた北朝鮮の中が、今ほとんどもう市場の原理で動いている事なんです。つまり配給制がなくなって一般の民衆っていうのは、国家がちゃんと面倒をみてくれないですから、自力で生きていかなくてはならなくなっている。そうすると国家とか指導者とか政権に対する忠誠心が非常に希薄化してきて、皆さん自力で生きていますから言うこと聞かなくなってきているんですよね。一番関心があるのはやはり『毎日をどうやって食べていくのか』という事です。」
【ナレーター】
「指導者への忠誠心が希薄になっている」という北朝鮮の民衆。この映像は変化を象徴するものなのでしょうか?
【アジアプレス・石丸次郎氏】
「VTRにあったようにですね、皆さん一生懸命商売をやっています。危ない、危険なんだけども、石炭を地下に入り込んで掘ってきてそれを市場で売っていると。これは危険なんだけれども、国家が面倒を見てくれませんからそうするしかない。またそうする事で、自分が生きていく手段となっているわけですよね。今回のVTRで、非常に今、民衆が頑張って生きている様子、国家を当てにせずに自力で何とか頑張って生きている様子がVTRの中によく現れていると思います。」
北朝鮮 石炭拾いの女性たち
【ナレーター】
雪が積もっている咸鏡北道(ハムギョンホクドウ)の炭鉱。線路の上に倒れた貨車がありました。そこにいたのは何人もの女性たち。防寒対策なのかシュールを頭に巻き、手袋をはめています。そして泥のようなものを掘り起こしています。何をしているのでしょうか?これも石炭なのでしょうか?
【脱北者・金美麗(キム・ミリョン)氏】
「質の悪い石炭を捨てている所があります。それが山になっているので鍬を持って行って拾い、エプロンなどに集めるんです。良い石炭も混ざっていますから。」
【ナレーター】
この地域に住んでいた脱北者・金美麗(キム・ミリョン)氏。この映像を見て「色んな事を思い出すのだ」といいます。
【脱北者・金美麗(キム・ミリョン)氏】
「ええ、私もやりました。夫がいなかったり、一人で生活する女性たちはあそこに行って掘って、ましな石炭をリュックに入れて家々を回って『石炭を買わないか』って声をかけるんです。そうやって石炭を売って麺1キロを買えたら大したものじゃないですか。そうすれば1日は生きられるじゃないですか。」
【ナレーター】
「こうした炭鉱には帰還事業で北朝鮮に渡った在日朝鮮人や日本人妻、さらに戦争後日本に帰国できなかった残留日本人もいた」といいます。金美麗(キム・ミリョン)氏は、食糧難で石炭を売り歩いていた当時に両親を亡くしていますが、その事を思い出しながらこう語りました。
【脱北者・金美麗(キム・ミリョン)氏】
「経験した人ならわかるでしょう。人は寒かったら飢えていたら眠くならないのです。夜が長く感じるんです。お腹の皮が背中にくっつくんです。夜が過ぎるのを待って、先の破けた靴を履いて石炭拾いに歩いて、石炭が売れなかったら声をあげるんです。家に帰るのが本当につらくて苦しかったです・・・。」(涙を流しながら語っていました)
*写真は'06 10/1日比谷公園で行われたグローバルフェスタJAPAN2006にて、北朝鮮難民救援基金さんが出展していた“ある脱北者が履いていた北朝鮮の靴”です。(あおいのママ撮影)
省略(続きはこちらをご覧になってください)
↓ ↓ ↓
*金正男氏?北京に現る
http://aoinomama13.seesaa.net/article/33449593.html
終わり
(ディレクター 吉田豊さん、岡本浩一さん、富岡裕一さん、竹澤英敏さん)
*皆さん、最後まで読んでくださってありがとうございました。(*^^*)/~~
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