【司会者・田丸美寿々さん】
続いては北朝鮮です。8月15日は北朝鮮から見れば「日本の植民地支配から解放された日」ということになるわけですが、北朝鮮の書物には「日本に勝ったのは金日成主席の指導の賜物」などと書かれていまして、何事も独裁体制の強化につなげていくのがこの国です。そして、そんな北朝鮮から逃げ出す人は後を絶ちません。脱北です。今改めてある脱北ルートが注目されています。命懸けの逃避行の生々しい実態を報道写真家の山本将文さんが取材しました。
北朝鮮の8月15日
【ナレーター】
8月15日、朝9時から始まった北朝鮮のテレビ放送。小泉総理の靖国神社参拝からわずか1時間後、報じられたトップニュースはこのようなものだった。
【朝鮮中央テレビ】
「ただ今から朝鮮人民軍最高司令官金正日同志が朝鮮人民軍部隊の畜産基地を視察なされたニュースをお伝えします。金正日同志は説明をお聞きになった後、ウサギ牧場をご覧になられました。」
【ナレーター】
金総書記の動きを伝える映像は7月5日のミサイル発射以降途絶えていた。1ヶ月以上も姿を消した理由は不明のままだ。その後画面は例年通りの光景に戻った。日本による支配から解放されたこの日、金日成主席の銅像の前に集い、感謝を捧げる市民の姿。こうして「金日成主席が祖国を日本から解放した」とする事実と異なる物語が刷り込まれていく。一様に明るい市民の表情。だが山本のカメラが捉えたのは祖国を逃れ自由を求めてさまよう人々の姿だった。
北朝鮮 新たな脱北ルート
【ナレーター】
雄大な草原が広がる国モンゴル。今年モンゴルは帝国を築いたチンギス・ハーンの即位から800年にあたり、盛大な記念行事が行われていた。13世紀に誕生したモンゴル帝国は当時、朝鮮半島にまでその勢力を拡大し、深い関わりを持っていた。そして21世紀。今度は北朝鮮からこの国を目指す人々がいる。
首都ウランバートルに建つ北朝鮮大使館。今月、ある日本人の姿が大使館前にあった。拉致被害者家族・市川龍子さんだ。龍子さんは北朝鮮による拉致被害者・市川修一さんの義理の姉。修一さんについて北朝鮮は「1979年に死亡した」としている。
【記者】
「その後、修一さんの詳しい情報はありますか?」
【市川龍子さん】
「いいえ、修一については全然(情報が)出てこないんですよね。一刻も早く、本当に何か生きている証拠をはっきりと見せてほしいなぁと思ってますけどね・・・。」
【ナレーター】
市川さんのモンゴル訪問には理由があった。一つは北朝鮮の人権問題に関する国際会議に出席し、拉致問題への関心を高めてもらうため。そしてもう一つの理由はモンゴルで起きている脱北者の新たな動きに期待したためだった。
*「北朝鮮難民と人権に関する国際議員連盟」第3回総会報告
http://aoinomama13.seesaa.net/article/22580591.html
【市川龍子さん】
「モンゴルには脱北の方たちが何百人かいらっしゃるって聞きました。またその人たちの力を借りて、一つでもいいから情報を得たいなぁと思っています。」
【ナレーター】
実は「モンゴルには数百人に及ぶ脱北者が逃げ込んでいる」との情報があった。市川さんは「この国に押し寄せる脱北者から拉致被害者に関する新たな情報が得られないか」と考えていたのだ。
報道写真家の山本も「脱北者がモンゴルを目指している」との情報を1年前につかんでいた。情報の発信源はこの男性。韓国人牧師・金聖浩(キム・ソンホ)さん。(76)去年11月、金さんは中国と北朝鮮を見下ろす丘に立ち、荒れた北朝鮮の大地を見つめていた。
【韓国人牧師・金聖浩(キム・ソンホ)さん】
「夕食時なのにほとんどの煙突から煙が出ていません。食事もままならないのでしょうか?まるで死んだ都市のようです。家が墓のように見えます。」
【ナレーター】
冬だというのに煙が見えない。「暖房すらないのでは」と金さんは言う。
【韓国人牧師・金聖浩(キム・ソンホ)さん】
「人権も保障されない“死の土地”から、自由を求めて命を永らえようと川を渡って来る同胞が今もいます。我々は彼らをどう助ければよいのか・・・。」
【ナレーター】
目と鼻の先にある北朝鮮。川の水位は下がり脱北も可能に見える。北朝鮮側には川で洗濯をする女性の姿。幼い少女。そりで遊ぶ少年に緊張感は見られない。
【報道写真家・山本将文さん】
「凍っております。国境の川・鴨緑江(アムノッカン)です。」
【ナレーター】
川の半分まで歩いて行くことも可能だ。
【報道写真家・山本将文さん】
「私の左手は北朝鮮のヘサンです。右手は中国です。ご覧のように川の半分が凍っております。」
【ナレーター】
見た目には穏やかな風景。だが、ひとたび川を渡れば命に危険が及ぶ。中国側には新たな動き。張り巡らされた鉄の柵。不法入国者を収容する施設。(中国東北部)脱北者は捕まればこうした施設に入れられ、北朝鮮に強制送還されていく。(映像・「図門収容所」)祖国で待っているのは過酷な強制収容所での暮らしだ。それでも危険を冒して祖国を逃れる市民が後を絶たない。
【報道写真家・山本将文さん】
「今、豆満江(トマンコウ)の中国側を走っていますが、ソウルから中朝国境にいる金さんに電話が入りました。」
【ナレーター】
頻繁にかかってくる電話。脱北者の情報だ。監視をくぐりぬけ中国に入った人物がまた現れたという。中国東北部のとある町。脱北者は小さなアパートに潜んでいた。
「こんばんは」「どうぞ入ってください」(住民)
30代後半の男性。「3日前に脱北したばかり」だという。中国東北部には多くの朝鮮族が住んでいる。男性は遠い親戚の家に身を寄せていた。人ごみに紛れて目立たぬように暮らす男性。「北朝鮮では飢えに苦しんだ」という。
【脱北者】
「まともな暮らしをしている家は半分もありませんでした。トウモロコシすら食べられません。」
【記者】
「トウモロコシを食べられるのはましな方なんですか?」
【脱北者】
「そうです。食べられれば幸せな方です。」
【ナレーター】
警察の影に怯えて暮らす日々。その後、男性は保護されていた親戚の家から忽然と姿を消した。脱北者を支援する金さんはこう話す。
【韓国人牧師・金聖浩(キム・ソンホ)さん】
「2年前はこの街で脱北者が活発に動いていました。しかし最近は静かになりました。中国が取締りを強化し、強制送還しているからです。」
【ナレーター】
中国は脱北者にとって安住の地ではない。そう感じた金さんは去年夏、モンゴルに目をつけた。
【韓国人牧師・金聖浩(キム・ソンホ)さん】
「女性は売られて男性は奴隷のように扱われています。脱北者を一日も早く安全な第三国モンゴルへ移動させなければなりません。」
【ナレーター】
金さんは76歳。自らの財産を投げ打って頻繁に中国やモンゴルに足を運んでいる。彼自身の体験が脱北者の支援に駆り立てる。
「生死を確認しろ!」去年('05年)ソウルのデモ行進に参加していた金さん。金さんは朝鮮戦争の際、北朝鮮の兵士に父親を拉致された。(金牧師の父・金有淵 キム・ユヨンさん)未だに生死さえわからない。父親の拉致から半世紀あまり、引き裂かれた家族の痛みを知る金さんは脱北者の支援に情熱を注いできた。去年、モンゴルのある街から正式な許可を得て受け入れ施設の建設に着手した。
4年前('02年)、中国(瀋陽)の日本総領事館で起きた駆け込み事件。脱北者はこれまで様々なルートで第三国への脱出を試みてきた。
@大使館への駆け込み。だが、中国は警戒を強めた。もう一つのルートはA東南アジアへの逃亡。広大な中国を横切るのは危険も多く、資金も必要だという。ではBモンゴルは?中朝国境からモンゴルまでの距離は東南アジアを目指すよりは近い。その上「中国のような厳しい取り締まりはしていない」という。
「お会いできてうれしいです。」3月、再び金さんは北朝鮮国境に近い中国東北部の街を訪れていた。北朝鮮政府国営の食堂には従業員の明るい歌声が響いていた。
【従業員・北朝鮮の女性】
「祖国に戻り、早く家に帰りたいです。」
【ナレーター】
北朝鮮から派遣されている従業員は3年勤務した後、祖国に帰る。その一方で・・・。
カラオケ店で働く二人の女性脱北者は故郷を捨て、警察の影に怯えながら暮らしていた。生き延びるため、歓楽街で働く女性。体を売り、子どもを産む脱北者もいる。子どもは無国籍となり、新たな悲劇が生まれていく・・・。
*'05 12/22 国民大集会 金聖浩さん
http://aoinomama13.seesaa.net/article/11379141.html
(2)に続く
*8/20 TBS「報道特集」(2)売買される脱北者の子供
http://aoinomama13.seesaa.net/article/22628933.html
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